【ニュース・アメリカ】USPTO、遺伝子編集技術「CRISPR-Cas9」特許権のブロード研究所による保有を認める判断

米国特許商標局(United States Patent and Trademark Office:USPTO)は2017年2月15日、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のジェニファー・ダウドナ教授(Jennifer Doudna)らが最初に開発した遺伝子編集技術「クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)」の特許権に関し、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)とハーバード大学(Harvard University、マサチューセッツ州)が共同出資するブロード研究所(Broad Institute、マサチューセッツ州)が保有する権利を認めるとの判断を下した。

 

「CRISPR-Cas9」は、ダウドナ教授と、当時ウィーン大学(University of Vienna、オーストリア)所属であったマックスプランク感染生物学研究所(Max Planck Institute for Infection Biology、ドイツ)のエマニュエル・シャルパンティエ氏(Emmanuelle Charpentier)が、2012年夏に同技術に関する論文発表と特許申請を行ったが、その数カ月後にブロード研究所のフェン・ジャン氏(Feng Zhang)が申請した同技術に関する複数の特許が同研究所に付与されることとなり、ダウドナ教授らはインターフェアレンス*を主張していた。本件を注視してきたニューヨーク・ロースクール(New York Law School)准教授のジェイコブ・シャーコウ氏(Jacob S. Sherkow)は、今回の判断を受け、ブロード研究所の明白な勝利とコメントした。なお、カリフォルニア大学は、控訴を検討するとしながら、全ての種類の細胞におけるクリスパー使用を対象とした独自の特許取得の道も残されているとコメントしている。

 
*インターフェアレンス(interference):抵触審査。アメリカ特許法は先発明主義をとるため、発明の優先を決定する必要があり、そのための審査をいう。特許要件を具備する実質的に同一の発明について特許を受ける権利があることを主張する2以上の出願人または出願人と特許権者の間において審査され、発明の優先は、当事者が発明を着想した日、発明を実施化した日および発明を実施することについての勤勉さを考慮して決定される。(「英米法辞典」東京大学出版会より)

 

2017年2月15日

 

The New York Times:Harvard and M.I.T. Scientists Win Gene-Editing Patent Fight

 

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アメリカ
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