米国教育審議会(American Council on Education:ACE)は12月16日、高等教育への補助金政策を各国で比較した報告書「世界の学資政策 ~高等教育における学位取得と公平性に向けた資金の活用~(Student Finance Policies Worldwide: Leveraging Funding for Attainment and Equity in Higher Education)」を発表した。
本報告書は、ルミナ財団(Lumina Foundation)からの助成金を受給して作成されたもので、高等教育を対象とした支援アプローチを、以下の4種類に分類して検証している。
- 授業料無料化
- 授業料を下げ、学資ローンの利用を抑える
- 授業料を変更せず、学資ローンを継続利用
- 試験成績優秀者の授業料を無料化する無料・有料併用政策
そして、主な結果は以下の通り。
- 低所得・マイノリティ学生の在籍・継続者数向上には、包括的政策よりも、収入に応じた授業料設定を含め、ローン・返済不要奨学金・授業料低価格化などに的を絞った政策アプローチが有効。
- チリ・カナダ・イタリア・南アフリカ・ニューヨーク州などで最近実施されている対象を絞った授業料無償化(targeted free-tuition:TFT)は、全国レベルで展開するには、支援を必要とする学生に資金を確実に提供するという構造面で困難なアプローチ。
- TFTモデルを実施するためには、概念を平等性(Equality =Sameness)から公平性(Equity= Fairness)に転換することが必要。
- 公平性と学位取得向上に向けた万能型の学資政策はなく、各国の事情によって異なる。但し、特定のアプローチへの直接的な移行はできないものの、複数の国家システムを検証し、機能するもの・しないものを検証することは有益。
- 政治情勢及び社会的価値観が、高等教育政策策定に大きく影響することは世界共通。
- 授業料、学資援助ともに高額な米国型のシステムは、一般的に進学率向上には効果的。
- 必要性に基づく学資援助に加え、学資援助の基準を、能力のある者にオファーするスタイルにすることで、学生の公平性を維持をスタンダード化することも重要。
なお、本報告書は、こちらからダウンロード可能。
American Council on Education:ACE Report Compares Higher Ed Funding Policies around the World