【ニュース・アメリカ】非白人教員・教員志望者による学資ローン負担、教員多様化の障壁に

 
公共政策研究・権利擁護機関のセンター・フォー・アメリカン・プログレス(Center for American Progress)は2019年7月9日、報告書『学資ローン負債 ~教員の多様性拡大に対する見過ごされた障壁~(Student Debt: An Overlooked Barrier to Increasing Teacher Diversity)』を発表した。
 
教員の多様性拡大は、過去の研究によってその重要性が実証されているが、教育省(Department of Education)が2013年に発表した統計結果によると公立校の教員の82%は白人である他、黒人教員の離職率は白人教員よりも高いことが別の研究で明らかにされている。
 
本報告書では、特に、非白人教員の学資ローン負担が、教員の多様化拡大の障壁となっている可能性に焦点を当てた分析を行った結果、以下が明らかになったという。

  • 教員養成課程に在籍した黒人学生の91%とラテン系学生の82%が連邦学資ローンを利用したのに対し、白人学生では76%のみ。また、黒人教員・教員経験者の88%とラテン系教員・教員経験者の76%が連邦学資ローン利用者であるのに対し、白人では73%のみ。
  • 教員養成課程に在籍した黒人学生の連邦学資ローン平均負債額は、2008年の2万2,699ドルから2012年には2万6,405ドルに増加。増加傾向が見られたのは黒人学生のみ。一方、2015-16学年度の黒人教員の平均年収は5万2,420ドルで、白人教員の5万5,120ドルを下回る。この給与格差により、黒人教員にとっては教員を続けながら学資ローンを返済することが困難。
  • 教員が大学院に進学する場合、連邦学資ローンを利用する割合は、白人教員は26%であるのに対し、黒人教員は47%、ラテン系教員では37%。

 
これらの結果を受け、本報告書は、①教員の給与引き上げ、②学資ローン返済全般に関するさらなる研究の実施、③教員の多様性拡大促進に向けた教員採用ツールとして、学区・州ベースでの学資ローン返済免除プログラム及び奨学金を提供、④教員資格取得のための質の高い代替プログラムの拡大、⑤マイノリティ受入大学における教員養成課程への支援強化、⑥ライセンス費・クラス教材費などに対する教員の自費負担を軽減するための資金の確保、などを提案している。
 
2019年7月9日
 
Center for American Progress:Student Debt: An Overlooked Barrier to Increasing Teacher Diversity
 

地域 北米
アメリカ
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