【ニュース・アメリカ】米国科学工学医学アカデミー、ITERプログラムへの参加継続を強く推奨

 
米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering and Medicine)は2017年12月21日、国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor:ITER)プロジェクトへの関与を含め、米国による燃焼プラズマ研究の現状を検証した中間報告書「米国による燃焼プラズマ研究戦略計画委員会中間報告書(Interim Report of the Committee on a Strategic Plan for U.S. Burning Plasma Research)」を発表した。
 
本報告書は、米国は核融合研究に関して世界から大きな後れを取っており、一部の連邦議員からの反対はあるものの、ITERプロジェクトへの参加を中止すべきではないと主張し、同プロジェクトへの資金提供を停止すれば、米国科学者は隔離され、中国などを含む他国を優位に立たせ、予算が限られている時期に核融合プログラムを一から再構築することが必要になると警告した。
 
ITERは、世界35カ国が参加してフランスに核融合実験炉を構築中であるが、コスト・スケジュール共に当初の予定を大きく超過し、2016年5月にエネルギー省(Department of Energy)が発表した報告書によると、米国が提供する資金は2020年度までに倍増する可能性があると予測している。そのため、2018年度予算案において、下院歳出委員会(House Appropriation Committee)はITERプログラム予算を割り当てているのに対し、上院歳出委員会(Senate Appropriation Committee)は同プログラム予算を割り当てていない。
 
しかし、今回発表された報告書は、米国の研究の進歩により、ITERのような実験がその科学ミッションを達成することに対する自信が深まったと主張している他、米国以外のITER参加国は既に核融合エネルギーの実証に関する国家戦略計画を策定しているのに対して米国は計画がなく、長期計画を策定しなければ、核融合エネルギー利用に必要となる科学技術の進歩において他国に追い抜かれる恐れがあり、また、米国には中規模実験1件が運用されているのみでもあることから、ITERから離脱すべきでないと提言している。
 
なお、ITERは、最初のプラズマ達成まであと半分という段階に到達したと、2017年12月前半に発表しており、2018年度大統領予算案及び下院版予算案では、ITERプログラム予算として6,000万ドル超が割り当てられている。
 
本報告書は、「INTERIM REPORT OF THE COMMITTEE ON A STRATEGIC PLAN FOR U.S. BURNING PLASMA RESEARCH」で閲覧可能。
 
2017年12月21日
 
Science:U.S. should support ITER fusion project, says expert panel

地域 北米
アメリカ
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