米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)は2017年12月12日、報告書「大学学士課程におけるSTEM(science, technology, engineering, and mathematics)教育監督のための指標(Indicators for Monitoring Undergraduate STEM Education)」を発表した。
本報告書は、大学におけるSTEM教育の質及びインパクトを監督するためには、学生の人口動態の変化、教員による証拠に基づく指導アプローチの利用、学生の他大学編入のパターンなどを含む全米データの収集が必要と提言し、大学学士課程におけるSTEM教育の様々な要素を改善するために、全般的な目標を3点挙げている。
現在、大学の価値の評価手段として一般的に使用されているのは、年収や専攻分野と関連する職場への就職などといった就職成果に関するデータの分析が主であるが、本報告書は、卒業率も卒業後の収入も、大学の種類、競争率、新入生の特性などによって大きく変化する他、年収や就職率は労働市場の需要にも左右され、時期・場所・分野によって異なるとしている。
さらには、多くのSTEM専攻学生は、伝統的にはSTEM分野の職種には分類されないものの、STEM関連知識が年収に影響する職種に就くことも多く、従来の手段のみを使用して大学の質を評価することは不適切としている。
本報告書が提示する指標システムの枠組みの下での全般的目標は、
- ①証拠ベースの事業・プログラムへの関与を通した、学生のSTEM概念・スキル習得度の向上、
- ②大学進学と成功のための機会提供を通した、STEM学生及び教員の公平性・多様性・包含性の促進、
- ③異なるSTEM分野で必要となるSTEM関連資格取得を通した、適切な人数のSTEM専門家の確保、
の3点で、指導の有効性に関する妥当な評価法の使用などを含む21項目の指標を用いることにより、これらの目標達成に向けた進捗状況の評価を行うことが可能としているが、同報告書を作成した委員会は、これらの指標を用いるために入手可能なデータが現在は存在しないことを指摘している。
そのため、必要なデータ獲得のための3つのオプションとして、
- 全米学生ユニット記録データシステムの作成、
- 米国教育統計センター(National Center for Education Statistics:NCES)のデータ収集拡大、
- 既存のデータと非連邦政府資料の組み合わせ、
の3点を提案している。
なお、本報告書は、「Indicators for Monitoring Undergraduate STEM Education」から閲覧可能。
2017年12月12日
National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine:Report Offers Guidance on How to Monitor the Quality of STEM Undergraduate Education