【ニュース・アメリカ】米国科学工学医学アカデミー、認識機能低下・認知症予防のための介入策は現時点では証拠が不十分と結論

米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering and Medicine:NASEM)は2017年6月22日、国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)傘下の国立老化研究所(National Institute on Aging:NIA)の要請を受けて、認知症及び認識機能障害を予防するための介入策に関する大規模な科学検証を行い、その結果をまとめた報告書「認識機能低下と認知症の予防~対処方法~(Preventing Cognitive Decline and Dementia:A Way Forward)」を発表した。

 

本報告書は、現時点では、認識機能の低下や認知症を予防するために特定の介入策を導入することを提案する公教育キャンペーンを支持できるだけの証拠はないと結論付けた。また、同報告書は、予防に有効であるとの証拠はないものの、①認識機能訓練②高血圧者の血圧管理③身体活動の増加、の3つの介入策を奨励するとした。さらには、医療ケア提供者に対し、これらの介入策が認知機能に好影響を与える可能性があることを患者に伝えることを提案している。

 

同報告書が提示する、これら3つの介入策によって得られる可能性のある効果と証拠の限界は以下の通り。

認識機能訓練:老化による認識機能の低下を遅らせるために、論理的思考・記憶・処理速度の強化を目的とした介入は、NIA助成を受給して実施した「独立した元気な高齢者のための先進認識機能訓練(Advanced Cognitive Training for Independent and Vital Elderly:ACTIVE)」の初期結果から、有効であることが判明。但し、異なる認識機能訓練のアプローチ及び技法における有効性は証明できないため、認識機能訓練が軽度の認識機能障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)もしくはアルツハイマー病発症の予防・遅延に有効と推奨するための証拠はなし。
高血圧者の血圧管理:高血圧者の血圧管理が認知症及び認識機能低下リスクを緩和することは、疾患の自然史及び生物学から妥当と考えられているが、アルツハイマー病などの認知症発症の予防・遅延に有効と推奨するための証拠はなし。
身体活動の増加:身体活動による健康への好影響は多く知られており、老化による認識機能の低下を緩和する可能性もその1つと考えられているが、MCIやアルツハイマー病の予防策として推奨するための証拠はなし。

なお、本報告書は、以下より閲覧可能。
National Academies Press:PREVENTING COGNITIVE DECLINE AND DEMENTIA:A WAY FORWARD

 

National Institutes of Health:NAS report:Promising but inconclusive evidence on interventions to prevent cognitive decline, dementia

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究