【ニュース・イギリス】教育費利益が研究費の穴埋めに。留学生一人当たり£8,000貢献

2017年11月9日、高等教育政策研究所(HEPI:Higher Education Policy Institute)は新しい報告書「How much is too much?Cross-subsidies from teaching to research in British universities」(著:Vicky Olive)で大学が教育で得た利益を研究費に当てている実態を指摘し、財務大臣であるPhilip Hammond氏に研究・開発費の予算の増額を呼びかけた。

 

【報告書で指摘している点】

  • 研究費の赤字は£33億(約5,000億円*)― 研究費収入の37%
  • 学費収入からの黒字は£13億(約2,000億円*)(非公的資金の教育収入の28%)
  • 研究費の13%は教育ファンドの余剰金(およそ£7ごとに£1)
  • 英国にいる留学生は平均で£8,000(120万円*)、英国の研究に貢献している。
  • もし研究ファンドの増額がなければ、英国の地方都市で多大な損害が出る。
  • 保守党が掲げるGDPの3%を研究開発費に当てるという目標を達成しようとするとさらに£248億(3兆7,200億円*)必要。

【報告書での3つの推奨内容】

  • 本年度の予算で研究費として£10億(1,500億円*)の増資。
  • 大学/慈善団体の連携のため余分な公的資金を別に蓄えておく。
  • 政府の研究開発費に関する新しいロードマップの作成。

オックスフォード大学(University of Oxford)で経済学を専攻する大学院生であり、報告書の著者であるVickey Olive氏は「教育で得た余剰金を研究に当てることで英国の大学を世界クラスに押し上げているが、大学はこれまでにないほどの危機に迫られている。政府は学生の学費を凍結をしたが、学生達はお金の使途をはっきりするように要求している。また留学生数は常に脅威である。学生が講義やセミナーで恩恵を受けていると考えているのであれば、教育から出た利益を研究に当てることは道徳的には間違いではない。しかしどの規模でこのようなことが行なわれているか、余剰金の行方を調査する権利はあり、その結果その価値や継続性などを議論できる。このプロジェクトを始めたときは特に隠された意思などなかったが、最終的にもっと予算が必要ということを強く確信した。より多くの民間資金、より多くの私的資金、そして明確な戦略が必要ということである。」と述べた。

 

HEPIの理事長であるNick Hillman氏は「研究費の不足分の穴埋めを教育費で賄っている理由として

(1) 公的、私的支援金、及び慈善団体からの資金は研究・開発費をすべてカバーしていない。
(2) 教育費から研究費の穴埋めは現在のレベルでは決して持続的ではない。
(3) 政府は研究・開発費をGDPの約2倍とすることを目標にしているが、投入額は現状維持が精一杯という額でしかない。

戦略としてOECDレベルの研究費の増額投資を数年続けた後にドイツレベルの投資をすることである。(これは2017年の保守党の公約にも入っていた)」と語った。

 

*£1を150円にて換算

 

Higher Education Policy Institute:New report shows each international student pays £8,000 towards filling gaps in UK R&D spending and calls on Philip Hammond to invest a further £1 billion in the Budget

地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
学生の経済的支援 学費
その他 その他