【ニュース・イギリス】報告書:スコットランドの貧困層の高等教育進学率は英国で最低

5月27日にサットントラスト(The Sutton Trust:教育を通じて社会流動性を促進することを目的とした基金)が発表した報告によると、英国全体では、若者の貧富の差による高等教育機関への進学率の差は狭まってきているものの、北部国境地域では、最も恵まれている上位5位の地域と下位5位の地域では4倍の開きがあることが示された。

 

分析結果の概要:
•2013~2014学事年度では、スコットランド人の55%が30歳までに高等教育機関に入学する。そのうち、20.9%は継続教育カレッジに入学し、34.1%が高校卒業後すぐに大学に進学している。イングランドでは46.6%が高等教育に進学するが、そのうち6%のみが継続教育カレッジや非大学教育機関に進学している。
•スコットランドにおける富裕層地域と貧困層地域での若者の大学進学率の差はほかのどこよりも急速に縮まってきているものの、18歳でストレートに大学に進学する率には、まだ4倍以上の開きがある。この数値は、イングランドでは2.4倍、ウェールズ、北アイルランドでは3倍である。
•一方、スコットランド基金会議(SFC: Scottish Funding Council)によると、スコットランドのカレッジでは、サブディグリープログラムを拡大してきており、恵まれない環境の生徒もカレッジのサブディグリー課程に入ることで、2006年以降は全成人の90%が高等教育機関に進学している。
•学術的に優れたスコットランドの大学は、他の英国の大学と同様、社会的にも認められている。スコットランドでもイングランドでも、そのような優秀な大学には、管理職・専門職の親を持つ学生が多く、その割合は1996年から2014年の間で変わっていない。
•高等教育統計局(HESA: Higher Education Statistics Agency)の基準によれば、スコットランドでは学術的に優れた、学費の高い機関が多く、反対にイングランドには安い機関が多い。また、イングランドでは1992年以降に創立した大学が多く、さほど優秀でない学生の受け入れ先となっている。
•スコットランドの政策立案者はインタビューの中で次のように述べている。“高等教育機関への進学を増やすため、特に入学のための色々な取組がなされてきたが、その効果の検証が不足している。競争率の高い中で、恵まれない環境からの生徒が一定数を占めるようになることが、効果的な方法だと思われる。”

 

勧告:
•スコットランド政府は、増加する需要を満たすよう高等教育機関を増やすべきである。
•高等教育の目標達成のための橋渡しプログラムは、学内での効果的な進路・教科相談と併せて拡大すべきである。
•進学の機会拡大の進展状況を確認するため、政府や大学から独立した形でコミッショナーを置くべきである。
•SFCとBISは、高等教育機関の種類ごとに、社会階層別の進学率を示すべきである。
•進学の機会拡大に関するイニシアティブは、重複を避けて計画すること及びその実施と併せて厳格に評価することが必要である。

 

The Sutton Trust:
Scotland worst in UK for poorest children going straight to university, says report
Access In Scotland

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