【ニュース・アメリカ】NIH、個々の科学者に対する助成額に上限を設定するという新方針を撤回

国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は2017年6月8日、個々の科学者に対する助成額に上限を設定するという5月2日に発表した方針を撤回し、その代わりに、将来的にはNIHの年間予算340億ドルの約3%に相当する10億ドルをキャリア初期~中期の研究者による研究助成のために確保するという、新たな計画を発表した。

 

NIHが5月に発表した計画は、「助成支援指標(Grant Support Index:GSI)」を導入し、助成を受給する研究事業に応じて研究者にポイントを与え、1人の研究者のポイントの上限を21点に設定するというものであったが、非常に生産性の高い研究所における研究の縮小や、共同研究の抑制に繋がる可能性などが懸念されることから、科学者からは反対の声が上がっていた。このため、NIHは、ポイントシステムを調整して影響を縮小するよう試みたものの、問題は解決されなかったため、「GSI」を取り下げて、代わりに「次世代研究者イニシアティブ(Next Generation Researchers Initiative)」を立ち上げることとなった。本イニシアティブの下で、NIHは、2017年にはキャリア初期~中期の研究者への研究助成のために2億1,000万ドルを確保し、5年後には約2,400件の助成に相当する11億ドルを確保することを目指すとしている。NIH長官諮問委員会(NIH Advisory Committee to the Director:ACD)は、新たに発表されたイニシアティブを全般的に支持しているが、「GSI」を支持していた若年層の科学者からは、NIHは年長の研究者が反対したために「GSI」を取り下げたのではないかとする懐疑的な意見も聞かれている。

 

【「助成支援指標(Grant Support Index:GSI)」計画関連記事】
【ニュース・アメリカ】NIH、研究助成の有効性を高めるために新たに「助成支援指標」を導入(2017年5月2日付)

 

Science:Updated:NIH abandons controversial plan to cap grants to big labs, creates new fund for younger scientists

地域 北米
アメリカ
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