生命倫理問題研究のための大統領諮問委員会（Presidential Commission for the Study of Bioethical Issues：PCSB）は2014年5月14日、神経科学研究及び当該研究結果の応用・導入に関連する倫理問題を検討するようにとのオバマ大統領の命令に応えて作成される2編の報告書のうちの最初の報告書「灰白質　～神経科学、倫理、及び社会への統合型アプローチ～（Gray Matters：Integrative Approaches for Neuroscience, Ethics, and Society）」（URL1）を発表した。PCSBは、本報告書において、神経科学研究者及び資金提供者が遭遇する倫理的影響は、他の生物医学研究などと共通しているものの、神経科学研究ではさらに明確に現れる可能性があるが、倫理問題を早期に特定し、時間をかけて対処することにより、研究は倫理的に問題ないと公衆を納得させられると述べている。また、科学と倫理問題の統合には科学者と倫理問題専門家との間での協力が不可欠で、この協力体制により、科学者と倫理問題専門家の双方に利益がもたらされるとしている。さらには、科学と倫理問題の統合のためのアプローチ例として、教育、研究機関のインフラ、研究における倫理的・法的・社会的影響の直接的検討、研究倫理相談、ステークホルダーの関与、及び研究チームへの倫理観包含などを挙げている。最後に同報告書は、神経科学研究に関与する研究機関及び研究者に対して、①研究に関連する倫理問題の特定、②これらの倫理問題に明確に対処するシステムの構築、③科学と倫理問題の統合のために十分な財政・人事・専門性の確保、④科学と倫理問題の融合のための新規・既存のアプローチの評価、⑤BRAINイニシアティブ関連の諮問・評価機関の包含、を提案事項として挙げている。

なお、本報告書は、以下の「URL1」から閲覧可能。

URL1: http://bioethics.gov/node/3543
URL2: http://blog.bioethics.gov/2014/05/14/bioethics-commission-releases-first-neuroscience-report-as-part-of-brain-initiative-calls-for-explicit-integration-of-ethics-throughout-neuroscience-research/