【ニュース・中国】修士課程18万9,000人募集拡大の意味は?(5)

 

募集拡大による「学歴価値の下落」を避けるため、育成の質の厳格な管理を

 
 「2020年全国大学院生募集調査報告書」によると、受験生が大学院受験を選択した主な動機の1つは、就職や仕事をする際の競争力を高める
ことだという。6割近い受験生が、大学院卒の学歴は就職に大いに有利になると考えている。「報告書」では大部分の受験生の考えをこう記している。
「大学院卒の学歴を手に入れ、就職市場で『頭一つ抜け出ようとする』のだ」

 
 「率直に言って、大規模な募集拡大を行った結果、知識の蓄積や学術研究に対する意識の面で準備が足りない学生が数多く大学院生になって
しまう恐れがある」

 
 蘭州大学高等教育研究院の包水梅教授は、そこで、こうした学生は確かに、理論的方法論や学術能力などの面で基礎的な訓練を行う必要があり、
「彼らの入学は始まりに過ぎない」と言う。

 
 育成人数が増えることは、質に影響しないのだろうか。そうした疑問は中国の高等教育の規模が拡大されるとき常に出されてきた。
今回の修士課程募集拡大でも予想にもれず「募集拡大により学歴の価値が下落するのではないか」という議論が再び引き起こされている。

 
 包教授は「募集拡大が学歴価値の下落を招くというのは人々の錯覚に過ぎない」と言い、卒業生の就職は極めて広範囲に及ぶ複雑な問題で、
社会の需要や大学院教育の質、個人の潜在的成長能力などが関係してくると主張する。

 
 そして「大学院生の規模拡大は必ずしも学歴価値の下落を招くわけではない。大学院卒という学歴の価値は、育成の質の管理が厳格に
行われているか否かが直接、関係してくる。

 
 高等教育が特別のものではなくなる時代には、一般社会は人材を、学歴だけでなく自身の能力と素質を見極めて評価しなければならない」
としたうえで、大学院生の育成においては、学校が健全な指導教員制度を確立し、指導教員が学生の指導に精力を傾けられるよう導き、
また過程を厳しく評価する制度を設けることはもちろんだと語る。

 
 一方、秦教授は「増加を続けるハイレベル人材は、わが国により大きな人材ボーナスをもたらす。修士課程の募集拡大という大きな動き
の中で、その育成の質が最重要の教育部門の課題にすべきである」と指摘する。
 

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 入試・学生募集