【ニュース・中国】修士課程18万9,000人募集拡大の意味は?(4)

 

募集拡大で試される高等教育機関の受け入れ能力 統一的な計画と募集の準備を

 
 学生が大幅に増加することで、教員や他の教育資源が不足しないか。これは、募集拡大に伴い、真っ先に考えなければならない問題だ。
現在、全国には約44万人の大学院生指導教員がいる。2018年の募集規模に基づいて計算すると1人の指導教員が平均1.77人の修士生を
受け持っている。18万9,000人の募集拡大を行えば、これが2.21人ということになる。

 
 清華大学教育研究院の王伝毅助教授によると、「一般的に、教員の指導の質を保障するには修士生は1年に2人指導するのが限度だとされている」
そこで、2016年に教育部が発表した省別の指導教員統計を見ると、中西部地区の指導教員が毎年受け持つ修士生はほとんどが平均2人未満であり、
河南省は1.17人、広西チワン族自治区は1.43人、雲南省は1.32人、寧夏回族自治区は1.24人となっている。

 
 「指導教員の総数から見ると、これらの地区ではまだ学生を受け入れる余地がある」王助教授の説明によると、2017年に新設された887か所の
専門職大学院は、多くが中西部地区の高等教育機関に配分されたという。

 
 募集拡大枠は、中西部地区・東北地区の高等教育機関と臨床医学、公衆衛生、人工知能等の専攻分野により多く配分される予定だ。
しかし、今回重点的に募集が拡大される専攻分野には出来たばかりの新しい専攻分野も含まれており、事前の教員確保は困難だと指摘する専門家もいる。

 
 王助教授もこの観点に同意する。「指導教員が十分に確保できるか否かは、学校や具体的な専攻別に考えなければならない問題だ。
わが国の大学院教育には、不均衡・不十分という問題が存在する。学生が過剰な学校や専攻がある一方、指導教員1人に学生が1人来るか来ないか
というところもある」

 
 他にも、近年、高等教育機関のPT比(教員1人あたりの生徒数)は投入予算とインフラの許容力と比例しないという研究結果もある。
つまり、募集拡大は高等教育機関のハード面にとってもかなり大きな試練になるということだ。

 
 南京大学の汪霞教授の指摘では、現在、高等教育機関の間でハードのインフラが不均衡だという問題がある。募集拡大の質と効果を保つ
ために汪教授が提案するのは、実験研究室の数・学生寮の条件・図書館の収容人数などを事前に検討し、「募集拡大を行う前に良質な教育資源の
共有計画を立て、『準備万端で募集拡大』を行う」ことだ。

 
 

つづき>> (5) 募集拡大による「学歴価値の下落」を避けるため、育成の質の厳格な管理を

 

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 入試・学生募集