【海外センターレポート・ブラジル】高齢者向けの高等教育について

 

世界の複数の国で高齢化が進んでいる昨今、ブラジルもその例外ではありません。ブラジル地理統計院(IBGE)の調べによれば、ブラジルでは過去5年間で高齢者人口が18%増え、2018年に3000万人を超えました。(※1)

 

ここ数年で加速した高齢化に伴い、高齢者へのより良い人生の提供、高齢者の社会進出、社会的包摂への気運が高まり、ブラジル国内の大学では、そのための方策の一環として高齢者世代向けの生涯教育プログラムを提供しています。

 

連邦政府は、2017年12月15日付法律第13535号により、「高齢者法」(2003年10月1日付法律第10741号)を改正し、高齢者向け公開講座(通学制、通信制)を開講することを国内の高等教育機関に義務付けたほか、高齢者層の視力の低下を考慮し、読書を助けるための教材の準備に必要な支援を行うことを政府の義務としました。

 

この法改正によって高齢者向けの公開講座開講が義務付けられる前から、多くの大学でこの取り組みが進められてきましたが、法改正に伴い、それまでに取り組みを行っていなかった大学では、新たな法的義務に対応してきました。また、例えば北部のロライマ州立大学では、公開講座を修了した高齢者向けに、学部課程への20人分の定員を特別枠として設けており、高齢者への学部入学を容易にするプログラムを実施しています。(※2)

 

高齢者との若い大学生との交流は、双方にとって有益なもので、世代を超えた経験や知識の交換や伝達が可能となります。特に、高齢者にとっては、より健康的に年を重ねるために非常に有意義となるでしょう。大学の公開講座で学ぶ高齢者達は、「自分への自信を取り戻した」「自分が社会で役に立つ存在であると感じる」と話しています。

 

高齢者向けの公開講座のテーマは、政治学、会計学入門、音楽史、法制度、天文学入門、スポーツ実習、家庭内事故防止、IT、手工芸、ダンス、健康的な食事と、多岐にわたります。(※3)この高齢者向け公開講座は、活力のある高齢化、社会的包摂によるメリットに関する議論や研究に資するものといえるでしょう。(※4)

 

サンパウロ海外アドバイザー 二宮 正人

 

※1 ブラジル地理統計院(IBGE):Número de idosos cresce 18% em 5 anos e ultrapassa 30 milhões em 2017
※2 Roraima em Foco:Universidade Aberta: Idosos se preparam para prestar o vestibular
※3 USPジャーナル(サンパウロ大学):USP oferece milhares de vagas gratuitas para a terceira idade
※4 高齢者向けの教育に関する記事のリンク

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 政府レベルでの取組
その他 その他
社会との交流、産学官連携 社会貢献
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