【海外センターレポート・ブラジル】高等教育と初等教育への予算額の差について

「全国市の教育指導者連合(Undime)」のイベントで、教育省大臣秘書官のマリア・エレナ・ギマランエス(Maria Helena Guimarães)氏は、高等教育への投資が今年の教育省の予算の約58%を占める見込みであるのに対し、初等教育に当てられるのは42%であることを明らかにしました。2013年に高等教育と初等教育への投資額が同水準となりましたが、同年以降はその差が拡大しています。

 

教育省のデータによれば、予算総額の1,360億レアルのうち、高等教育には797億レアルが、初等教育には563億レアルが当てられています。2010年以降、高等教育への投資額は176%増大したのに対し、初等教育は90%増にとどまっています。高等教育における支出には、レジデントへの奨学金、大学病院の経費、医師派遣プログラム「Mais Médicos」の一部、私立大学に通う学生への奨学金プログラム「Prouni」の経費が計上されます。

 

マリア・エレナ秘書官は、教育省の高等教育向け投資額の一部、例えば、「Mais Médicos」の指導教員、コーディネーター、スーパーバイザーの奨学金の年間経費3億レアルを保健省にまわすべきとしています。レジデントへの奨学金は毎年、教育省の予算の約15億レアルに上っており、同秘書官は「高等教育への支出の“激増”は、ここ数年、大学の数が無秩序に増えていることが原因」と指摘しています。

 

しかし、教育省として大学への補助金交付を見直す案は無いものの、議論を始める必要があるとしています。同秘書官によれば、公立学校の初等教育課程に在籍する生徒一人への年間投資額は3,100レアルであるのに対し、高等教育機関の学生一人への年間投資額は28,000レアルに上っており、不当なほどに大きな差となっています。

 

ある特定のプログラムに向けた国営企業と提携などの一時的な政策は、有益ではあるものの、補助金に関する問題解決にはならず、国の経済が回復経路に乗った後にのみ根本的解決が期待できると、同秘書官は見ています。高等教育においては、全国の63の連邦大学と、40の技術学校が教育省からの補助金を受けています。

 

高等教育、初等教育の双方への充分な投資を確保するためには、国の景気回復だけでなく、配分される予算のより適正な管理を行う必要があります。今後、投資額の差の拡大が進むと、国全体の教育の発展に支障をきたす問題となります。

 

O GLOBO:Ensino superior consumirá 58% do orçamento do MEC deste ano 2017年8月8日付(2017年8月21日閲覧)

 

サンパウロ海外アドバイザー 二宮 正人

地域 中南米
ブラジル
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