【海外センターレポート・ブラジル】難民認定された人々の学位認証に関するサンパウロ州の対応について

サンパウロ州知事が州法第557/2016号を2018年3月21日に裁可し、州官報において公示されたことに伴い、ブラジル国内で難民認定された人々が母国等で取得した学位(学士、修士、博士を含む)がサンパウロの州立大学において審査・認証される場合に、その手数料が免除されることになりました。
例えば、サンパウロ大学(Universidade de São Paulo:USP)は、この国外の大学の学位審査・認証の手数料として2,130レアル(+学位の印刷代150レアル)、カンピーナス大学(Universidade Estadual de Campinas:Unicamp)、サンパウロ州立大学(Universidade Estadual Paulista:Unesp)は2,255レアルを請求しています。しかも、審査・認証の結果が出るまでには数ヶ月を要している状態です。

 

ブラジルは、1961年に『難民の地位に関する1951年の条約』*を施行しており(1960年に批准)、難民の人々に対する、彼らの母国等の大学における学修・研究歴、学位、資格認証手数料の無償は、この条約の定めるところとなっています。また、ブラジル連邦法第9474/1997号第44条は、難民の人々が直面している困難な状況を考慮し、国内の難民の学位や学修歴の証明書の認証手続を滞りなく行わなければならないと定めています。

 

難民の人々に学位認証手続きのサポートをする非政府組織「Compassiva」のカミラ・スエミ(Camila Suemi)氏は、「(難民の人々は)高度な学歴、職歴を有しているにも関わらず、国内では学位認証を行わないと、自らの専門分野で働くことができない。認証そのものの手数料に加え書類の宣誓翻訳を付ける必要もあるため、費用は非常に高額で、必要書類や手続きも非常に煩雑。」と現状を説明しています。

 

この州法の適用のための規則は、州知事の裁可から30日以内に整備される見込みです。法案を作成したカルロス・ベゼラ・ジュニオール(Carlos Bezerra Jr.)州議員(ブラジル社会民主党=Partido da Social Democracia Brasileira:PSDB)は、「難民の人々の労働市場への完全な包摂の実現に向け、サンパウロ州は重要な前進をした。学位認証の容易化無くしては、真の(難民)受け入れは無い。」とコメントしています。
ちなみに、国家難民委員会(Comitê Nacional para Refugiados:CONARE)によれば、ブラジルは2017年に33,866件の難民申請を受け付けています。

 

*国連(国連難民高等弁務官事務所/The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees:UNHCR)による国際条約

 

G1.globo:Lei isenta refugiados de pagar para revalidar diploma em universidades de SP 2018年3月21日付(2018年3月22日閲覧)

 

サンパウロ海外アドバイザー 二宮 正人

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 国際機関レベルの取組、政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
その他 その他
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