特に私立大学において大幅な人員整理が行われたことで、高等教育へのパンデミックの影響は8月末から9月初めに再び社会の注目を集めました。
教員の労働組合によれば、実際に、サンパウロだけで4月から現在までに1674人の教員が解雇されました。 (※1)
5月の報告書でも言及しましたが、その主な理由は学生の退学と学費の不払いです。教育省はパンデミックの影響でFIES(私立大学学部生を対象
とする融資基金)の毎月の給付金の支払いを停止しており、それも学費不払いの大きな要因となっています。
収入が減ったことが教員の大量解雇を生み、サンパウロの私立大学UninoveとUnisulでは、それぞれ全体の50%、40%に上る教員が解雇
されました。また、解雇を免れた教員においても勤務時間が短縮され、それにより教員の賃金が減って、他の経済セクターに影響する危機の
悪循環が生まれています。
予算を削減すると同時に、教育省は、各学部で通信制で実施することができる講義の割合を全体の20%から40%に引き上げました。
コロナウイルスの感染拡大に伴って高等教育機関の授業はほぼオンラインとなり、それにより教員の解雇がさらに進んでいます。
ただ、一つのオンライン講義に異なる学年や学部の学生が参加し、120人から180人の学生にオンライン講義が行われている状態で、これは
教育の質を下げるとの教員の批判が集まっています。また、解雇された教員が行った講義の録画が、当該教員解雇後も公開されていることを
教員労働組合は問題視しています。
通信制をしないとなると通学制の講義に戻すことになりますが、それに関しては、コロナ感染拡大への懸念から現在関係者の間で議論と
批判が巻き起こっています。サンパウロ大学(USP)は通学の講義を2021年まで行わないことを決定しています。
感染者数と死者数の減少後にどのような対応をしていくべきか、教育や経済に実際にどれほどの影響が及んだかは、今後さらに時間が経過して
からの判断となるでしょう。特に教育分野では、知識の伝達と教員養成という必要性に対応する、これまでの経験・知見に基づいた有効な
プロジェクトが立ち上げられることが望まれます。
(※1) Globo Comunicação e Participações S.A.:
Faculdades particulares de SP lotam salas virtuais com até 180 alunos e demitem mais de 1.600 professores durante pandemia