前回の報告書でも述べたように、コロナウイルス感染症の拡大により、全課程の教育が様々な影響を受けました。特に高等教育においては
通学型からリモート型への移行がみられ、通信制の高等教育が大幅に拡大しました。それに伴い、まだ初期段階ではあるものの、通信教育システムの
さらなる改善のためのテクノロジーへの投資も行われています。
この変化は様々な形で反響を起こし、中でも教員と学生間の新たな形の相互交流が求められています。ただし、この新たな形の相互交流には
良い面と悪い面があり、教室で単に受動的に講義を聴くことに慣れていた中で、知識伝達のあり方の新しい現実を前に、学ぶ機会を損なわれたと
感じられた学生もいるものと思われます。
しかし、国家教育審議会元会長で顧問のルイス・ロベルト・クリ氏は「通信教育は自主的な学びを促進し、学生間のネットワークも拡大する」と
述べており、その理由として、通信教育のプラットフォーム上にチャットやその他コミュニケーションツールがあること、通学の必要が無いことで
時間に余裕ができ、勉学に集中する時間が増えたこと等を挙げています。その結果、教室で講義を聴くだけでなく、教員や学友とのより広い交流が
進むことで、学生のより能動的で自主的な学びが期待できるというのがクリ氏の見解です。 *1)
クリ氏が挙げた通信教育の別の肯定的側面は、高等教育の通信制への移行が必要となったことで、通学制と通信制の垣根がなくなったことです。
対面授業が実施できなくなりリモート授業への移行が余儀なくされたことで、学生のより広範な能力の養成を視野に入れた、対面式とリモート式の
融合型教育の将来的な実施が具体的なものとして検討され始めました。
一方、社会学者のシモン・シュワルツマン氏は、リモート式授業の受講にはコンピューター、カメラ、インターネットアクセスが必須となる
ことから、通信教育へのアクセスを保障すべく、学生の経済状況を考慮する必要性を訴えています。パンデミックの中、リオデジャネイロ連邦
大学をはじめとする複数の大学では、一部の学生に対しコンピューターとインターネット環境の為の資金が支給され、デジタルインクルージョンを
進めるための方策が採られています。 *2)
コロナ禍終息の見通しがつかない中、教育関係者には刻々と変化する現実への対応と忍耐が求められています。国家教育審議会は既に、
2021年の動的なシナリオを見据え、コロナ禍の影響と傾向を注視した上での必要な場合のリモート講義の導入、対面講義をリモート講義で
補充する融合型教育の実施を許可する方針を固めています。 *3)
参照リンク *1) Ensino híbrido na educação superior deve se alastrar para mais cursos no pós-pandemia
参照リンク *3) Ensino híbrido na educação superior deve se alastrar para mais cursos no pós-pandemia