【海外センターレポート・ブラジル】科学・技術、教育分野の予算削減について

 
今年3月末に承認された連邦予算では科学・技術・イノベーション省(MCTI)の予算が29%、教育省予算が27%、環境省予算が25%とそれぞれ大幅
に削減されました。これにより、保健分野、エネルギー分野の調査・研究への奨学金給付を含む、各種関連事業の維持と進行に大きな影響が及ぶと考え
られます。 ★1

 
さらに、実際に割当が保障されているのは承認された予算の約半分のみで、残り半分は、国の経済・政治情勢をふまえ連邦議会が年間を通じて割当を
決定することとなっています。国家科学技術開発審議会(CNPq)に割り当てられた金額は、研究への奨学金のわずか4ヶ月分に過ぎません。

 
特にCNPqの奨学金維持のために昨年採られた代替策は、国家科学・技術開発財団(FNDCT)の資金を流用するというものでした。今年もそれを
行わない限り、奨学金が打ち切り
となり、高等教育人材育成調整機関(Capes)や連邦大学の運営も危機的状況に晒されることになりかねません。

 
一方、連邦議会は、FNDCT運営の規定を変更する法律第177/2021号を可決し、FNDCTの予算削減の禁止、すなわち、既に承認され、年間を通じて
(特に収入分を中心に)見直される予算の流用の停止が定められました。

 
これにより、MCTIの予算削減分を補填する追加的予算が承認され、研究活動の維持が保障されることとなります。ボルソナーロ大統領はこの予算削減を
禁じる法案に拒否権を発動しましたが、議会はこの拒否権を認めませんでした。

 
しかし、この法律は今年度予算が議会で承認された日の翌日に公布されたため、同法が定める予算削減の禁止の効力が及ぶのは2022年以降の予算
のみとなります。

 
ただし、この承認された予算を法として定めた予算法がまだ公布されていないため、今年度予算に同法の効力が及ぶとの解釈も可能であり、その場合
は予算法の内容の見直しが必要となります。

 
同時に、ブラジルの科学・技術分野の活動を継続するための様々な対策が採られています。MCTIのマルコス・ポンテス大臣は、下院の科学・技術・
通信・IT委員会の公聴会で、科学・技術分野が直面している危機的状況を示す様々なデータを公開し、議員らに対して既存の体制維持と活動継続のため
の支援を訴えました。
 


★1 JORNAL DA USP:Orçamento 2021 compromete o futuro da ciência brasileira

 

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政