【海外センターレポート・ブラジル】全国高等教育フォーラムについて

 
 サンパウロ州高等教育機関運営団体組合(SEMESP)が実施する「第22回全国高等教育フォーラム(FNESP)」が10月27日から29日まで
の3日間、初めてオンラインで開催されました。

 
 今回のフォーラムのテーマは「高等教育のリセット」で、SEMESPのエルメス・フェレイラ・フィゲイレード総裁は挨拶で、「(大学運営の)
ビジネスモデルの“リセット”とは、経営面、教育・研究面のいずれにおいても、大学の体制を一新することを意味する。コロナ禍により、これまで
と同じ方法で運営していくことは不可能となった」と述べました。 (*1)

 
 基調講演は『Natural Born Learners』の著者アレックス・ビアード氏が務め、「教師は、21世紀の偉大な職業。テクノロジーと人工知能は
重要だが、教師の教えを補完するものとして利用されるべき」と説きました。さらに、「教師は、環境問題が深刻化し、格差とグローバル化が
加速する時代において前代未聞の課題に直面している。教師は、自ら物事を考え、批判的な思考をする学生を育てていかなければならない。彼らは
人間のポテンシャルを開拓する者となるであろう。テクノロジーはよりよく学ぶためのツールであり、学びを自動化するものではない。そのためには、
教育者の在り方を再考し、再定義し、養成をし直す必要がある。次なる学びの改革の主導権を握るのはあくまで教育者であり、テクノロジーは
その手助けをするまでである」とも述べています。 (*2)

 
 国家教育審議会のマリア・エレーナ・ギマランイス・デ・カストロ会長は、「大きな課題は、21世紀に必要とされる能力・資質を備えた教員、
すなわち新たな困難に対応できる教員の養成である。 (*3)  そのために大学の運営母体、経営者、教員に求められるのは、テクノロジーの発展
を含めた社会、文化的変化に適応し、想定外の問題に対応できる能力を学生達が身に着けるための支援をすることである」と述べました。

 
 私立の高等教育機関の学生約42万3000人が学業中断を余儀なくされるという、コロナ禍がもたらした未曽有の危機を克服するために、いかに
イノベートできるかが重要な課題です。フランシスコ・マルモレホ氏は、質の高い教育を提供するためには戦略的な協力関係と柔軟性が必要
と説きます。その例が、大学コンソーシアムを形成して、コンソーシアムに加盟する大学で学業を継続させることです。有名なのが米国ジョージア州
のアトランタ・ユニバーシティ・センター、マサチューセッツ州アマーストの5大学コンソーシアムで、単位交換制度や施設の相互利用、複数の大学
の学位取得制度などが実施されています。 (*4)

 
 コロナ禍以前から通信制の講義を取り入れていた大学においては、パンデミックがもたらした「ニューノーマル」への適応が容易であったと
思われます。しかし、マルモレホ氏が述べるように、通信教育への移行は教育そのものをイノベートする変化ではなく、単なる教育の提供方法の
一つに過ぎません。通信教育は、ニューノーマルに求められる技術や能力を考慮しながら、今後も構造的に改良される必要があります。魔法の
ようなシンプルな解決方法はありません。コロナ禍は、その多方面に及ぶ種々の悪影響も含めて、高等教育を再考させる契機となった出来事
であるといえます。 (*5)
 


(*1,2)FNESP:    Professores vão liderar revolução da aprendizagem

(*3) educação superior: Como repensar o sistema de educação superior

(*4,5) educação superior: Universidades precisam se reinventar e buscar inovações disruptivas

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 教員の養成・確保