【海外センターレポート・ブラジル】ブラジルの大学院課程の予算削減について

連邦政府の財政調整政策により、ブラジル教育省関連機関である教育省高等教育評価支援機構(Coordenação de Aperfeiçoamento de Pessoal de Nível Superior:CAPES)が運営する大学院課程への支援プログラム(PROAP)の予算が75%削減されたことで、ブラジルの大学院課程が大打撃を受けました

 

PROAPは、国内の修士課程と博士課程の直接の資金源であり、学生の論文審査委員会への教員の参加や、学会・講習での研究発表のための旅費、備品の購入・維持費等の経費を支出しています。

 

この予算削減に伴い、国内の大学院においては、国内外の学会で研究者が研究結果を発表する機会が失われるだけでなく、科学実験を行うための資金、資材や備品の不足により、研究継続の見通しが立たなくなるほどの大きな影響を受けました。報道によれば、バイーア連邦大学はこの予算削減で資金難に陥り、200万レアルに達する負債を抱え、大学院課程の開講を中断しています。

 

一般の学術界、全国大学院生協会などの学生団体、連邦高等教育機関指導者協会(ANDIFES)等による抗議行動が行われ、大幅な予算削減の見直しを訴える書状が、教育省、科学技術イノベーション省、ルセフ大統領宛に送られました。

 

予算削減の対象が大学院課程への支出に向けられたのは、学部生・院生向け学術研究助成金を完全に維持することが目的でした。抗議行動への回答として、CAPESは、予算の90%を維持する意向を示しましたが、予算交付は遅れており、教育大臣の発言によれば、奨学金制度を保証し大学院課程の質を維持すべく、見送りが可能な事業を検討するために、予算の再配置を行っていることです。

 

科学技術イノベーション相は、財政調整による予算削減を前に、同省においては主要事業は何ら影響を受けていないと明言しており、プレサル(深海油田)のソーシャル・ファンドを利用するため大統領と運営を行う等の解決の選択肢を模索するだけでなく、同省としては、他国の学術研究振興機関等の外部の資金源を探し、予算を再編成する方針であることを表明しています。

 

経済が回復すれば全ての交付金が見直される可能性はあるものの、今後の大学院課程への今後の影響、学術研究継続のためのパートナーシップ構築があるのか、あるいは財政的実行可能性の不足により、大学院課程が放棄されるのか、今年と来年以降は引き続き展開を見守る必要があります。

 

(サンパウロ海外アドバイザー)

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
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