【海外センターレポート・ブラジル】パンデミックにおける大学の役割

 
 サンパウロ市はじめブラジルの各地でCOVID-19感染拡大防止のための外出制限措置が開始されてから1ヶ月余りが経過した今、社会のあらゆるセクターにおいてその慣行を調整し、現況に適応することが求められています。サンパウロ州全土においては教育機関で授業が停止され、生活に不可欠な施設以外は全て閉鎖された状態が続いています。この外出制限措置が功を奏して感染者数の飛躍的な増加は抑えられていると専門家は見ていますが 、*1)各地で公的医療機関が機能停止に陥りつつあります。社会全体としてこの危機を乗り越えるために様々なイニシアティブが採られている中で、大学も独自の取り組みを行っています。その例として、サンパウロ大学(USP)の研究者は、専門知識とラボラトリーの施設を活用し、感染の有無を調べる検査や医療機器の需要増大への対応策を提供することで、公的機関を支援しています。

 
 「Supera Parque」は、知識移転を目的とするイノベーション環境の整備を支援するインキュベーターで、USP、リベイロン・プレット市役所、サンパウロ州経済・科学・技術・イノベーション局と提携し、USPのリベイロン・プレットのキャンパスを活動拠点としています。*2)  このSupera ParqueがCOVID-19対策プロジェクト「Supera Ação」を企画し、18のスタートアップが、COVID-19検査実施に必要な専門知識、ラボラトリーの器具、インフラを提供するために結集しました。*3)  

 
 このプロジェクトで、既に5000の検査キットが販売され、リベイロン・プレット市から送られた、感染が疑われる患者から採取された検体検査に用いられています。このプロジェクトはボランティアとして行われているため、検査キットの原材料や保護器具の購入のための寄付金をより多く集めることが必要であり、一日に約250検査、合計で3万検査を行うことが目標とされています。

 
 また、USP工学部の技術者グループが、2時間で製造でき、市場に出回っている通常のものよりも15倍安い価格の人工呼吸器を開発しました。 *4) このプロジェクトは「Inspire」と称されるもので、ラウル・ゴンザレス・リマ教授の指導の下で実施されています。開発にあたっては、獣医学部、畜産学部の動物実験、医学部のジョゼ・オタヴィオ・アウレル・ジュニオル教授の指導によるUSP心臓病院の入院患者を対象とした試験を経て開発されました。このプロジェクトの趣旨は、パンデミックにより医療機器の需要増が発生したときに、国内で調達できる部品や技術を利用して低コストで対応することです。開発した工学部においては製造ができないことから、製造に関心がある業者には無償で製造ライセンスが提供されています。
 


<参照リンク>
JORNAL DA USP: Matemática prevê cenários para covid-19 e muda rumo de governos

superaparque:  Temos a estrutura para acelerar seu projeto de base tecnológica.

JORNAL DA USP: Matemática prevê cenários para covid-19 e muda rumo de governos

globo.com:    Respirador criado na USP é aprovado em testes com humanos; aparelho é feito em 2 horas e 15 vezes mais barato

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
社会との交流、産学官連携 社会貢献