【海外センターレポート・ブラジル】技術教育の評価向上について

 
非営利団体の MBC(「競争力あるブラジルを目指して」の意)が経済省と共同し、ブラジルにおいて労働人口に対する専門的職業教育の不足が及ぼす影響について調査しました。それによれば、経済の著しいデジタル化、新たなテクノロジー導入による急速な変化が進む中、職業教育機会の不足による損失額は1230億レアルにも上ることが分かりました。また、熟練労働者の不足によりデジタル産業では30万人から50万人ほどの人材が不足していると言われています。

 
この状況を前に、MBC は、技術教育がいわゆる普通教育と同等に評価されるよう企業の意識変革を図り、ブラジルの中等教育課程全体に占める技術教育課程の定員数を12%から40%(OECD 加盟国の平均)に近づけたいとしています。

 
ただし、企業だけでなく学生の意識改革も必要です。企業においては技術教育しか受けていない人への評価が不十分であるという現状があり、それが給与や職位にも表れています。他方、学生の間でも、技術教育しか受けていない場合は低収入や昇進の機会に恵まれない状況に甘んじなくてはならないとの思いから、技術教育を避ける傾向が見られます。

 
技術教育に対する見方や意識を変革すべく、非営利団体のブラジル人材協会とMBCは合同で、技術教育への評価向上に向けた取り組みに加え、産業・経済界からの需要に応じた、各地域における技術教育への需要の調査も行いたいとしています。

 
また、就労後も職業教育は継続して行われる必要があるとの意識付けも重要で、場合によっては企業が自社の社員の教育に部分的に責任を負うことも求められるでしょう。このような状況下で、昨今では独自に特定の技術分野の研修を行う企業も増えてきています。(前回の報告書参照)

 
技術教育への評価向上の取り組みは、思春期を終えた後に将来何をしたいかを考える若者のより良い進路選択を助けることにも繋がります。新しいテクノロジーが経済情勢を変え、近い将来には人工知能の活用で今後無くなる職業も出てくることが考えられる今、職業選択の幅を広げることは、若者の就労を助け社会への貢献を促すことにもなるでしょう。

 


参照記事: Valorização do ensino técnico entra na pauta de empresários


 

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事
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