【海外センターレポート・ブラジル】高等教育の変革について

 

新たなテクノロジーが台頭し、社会、経済、環境の側面において世界規模で新しい需要が生まれていることを受け、高等教育は従来から議論、再考の対象となってきました。パンデミックの発生で、知識の管理と伝達の新たな枠組みの構築、テクノロジーや新たな教育方式の導入など様々な変化の必要性が浮き彫りとなり、それが学術研究のあり方にも影響を及ぼし、国境を越えた遠隔での協力が求められてきています。

 
以前の報告書では、通信教育の問題、この知識伝達の形式において必要となる教育方式、大学の物理的なスペースの使用がなくなったことによる学生からの学費減額の要求などを取り上げました。テレワークへの移行で企業のオフィス明け渡しが相次いだことから不動産業界も大きな影響を受け、対面式勤務でなくとも生産性は維持されることが明らかになったことで、就労の形態は大きく変わりました。同じ現象が高等教育においてもみられます。

 
EY パルテノンの最近の調査では、高等教育におけるこれら変化の影響や、今後10年に起こり得る変容が概観されています。

 
この調査結果によれば、市場の需要に対応できるだけの十分なスキルや知識を備えた若年就労者の不足を受け、種々のセクターの企業が社内教育に注力する必要に迫られています。大手コンサルティングファームや監査法人、投資銀行、建設会社、病院などで、批判的思考ができ、問題解決のための広範な知識や能力を備えた、特定の需要に対応できる若者の養成研修や講座が創設されました。

 
また、対面式教育がコミュニケーションや相互交流のスキル向上を助け、より充実したディスカッションを可能にすることから、対面と遠隔を融合した教育方式を推奨する専門家の意見も紹介されています。その一方、諸外国の教育機関で実践されている「プロジェクトベースドラーニング」の利点や、学生のパフォーマンスや成績に応じた学費徴収という革新的なアイデアについても取り上げられています。この点において、イギリスでは Teaching Excellence Framework と呼ばれる大学評価制度が設けられました。Teaching Excellence Framework とは、卒業後の学生の教育投資利益率、学業継続率、満足度などの視点で大学を評価し、高評価を受けた大学は政府からのより多い資金援助を受けることができるというものです。

 
複数のセクターにおいて非従来型の社員教育に投資が行われていることで、様々な形の知識伝達が生まれており、市場の拡大や、パンデミックにより生じた危機的状況における存続を目的とする複数の小規模の大学を統合する動きも出てきています。

 
新たな教育方式、評価制度、理論的知識の伝達にとどまらない実践的教育の優先的実施といった以上全てのことが、社会的変化に対応するために高等教育において必要な改革と捉えられています。当然ながら、これら一連の変革は市場競争にさらされる民間の教育機関においてより積極的に行われていますが、公立大学で行われる従来型の教育もその影響を受けて然るべきといえるでしょう。

 


参照記事リンク: Ensino superior passa por transformação


 

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
レポート 海外センター