【海外センターレポート・ブラジル】高等教育機関におけるダイバーシティについて

 

6月は LGBTQ+ の権利について啓発を促す「プライド月間」で、6月28日は「LGBTQIA+ のプライドの日」として知られています。この LGBTQIA+ は性的指向の多様性を支持する動きを意味し、ゲイ、レズビアン、ゲイフレンドリー(GLS)から始まってレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(LBGT)となり、そこにクィア、インターセックス、アセクシュアル(QIA+)が加わりました。「+」は、これらのいずれにも当てはまらない性自認、性的指向を持つ人々を指します。

 
LGBTQIA+ コミュニティの大学・高等教育機関における存在は、このコミュニティの構造的問題や同僚や学生が持つ抵抗感から、教員においても学生においても弱いのが現状です。性別変更とソーシャルネーム(性転換者が自分の名前と認識する名前)の使用は、2016年4月28日付法律第8727号命令において認められていますが、それでもなお、学生や FAPESP(サンパウロ州学術研究支援財団)、CNPq(国家科学技術開発審議会)、CAPES(高等教育人材育成調整機関)等の機関の研究者が抱える困難が報告されています。

 
家庭内でのこの問題の難しさは公的な場面でも表れており、社会的な立場の弱さ、人間関係での問題(見捨てられる、裏切られる等)、インフォーマリティといったこのコミュニティの人々が晒されている問題が浮き彫りになっています。ここ10年間で人々の意識における大きな変化が認められていますが、学界において自らの性的指向を明かしている人はわずかであるため、受容されないという問題に直面している人もわずかという状況です。

 
この現状は2018年の数字に表れています。連邦高等教育機関総長協会(Andifes)の調査によれば、大学・高等教育機関に入学する人のうちトランスジェンダーの人は全体のわずか0.1%であったことが分かりました。いくつかの大学では、広範な包摂政策に加え、トランスジェンダーの人向けの特別入学枠を設置していますが、適切な候補者の不足によりその枠が埋まらないことが少なくありません。

 
大サンパウロ都市圏に所在するABC連邦大学(UFABC)は、「トランスジェンダー・性転換者・異性服装倒錯者特別委員会」を設置しています。この大学は2018年から定員の1.6%をトランスジェンダーに充てましたが、その枠で入学した人はわずかでした。2020年時点では、自らトランスジェンダーと申告する学生は60人でした。

 
ジェンダー、性的指向に関わらず社会的包摂政策に関する議論が進むなかで、大学で学ぶこのコミュニティの人が増えることが望まれます。その一方、大学にとどまらない初等・中等教育機関における包摂政策の展開においては、ブラジルの家庭の大半に根強く残る保守主義が大きな壁となっています。


出典: Pessoas trans no ensino superior avançam, mas ainda há desafios … – Veja mais em https://noticias.uol.com.br/ultimas-noticias/agencia-estado/2022/06/28/pessoas-trans-no-ensino-superior-avancam-mas-ainda-ha-desafios.htm?cmpid=copiaecola


 

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
人材育成 研究人材の多様性
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