【海外センターレポート・ブラジル】PIPE-FAPESP助成による新型コロナウイルス感染症検査キットの開発

 
サンパウロ州学術研究支援財団(FAPESP)が行う「小企業における革新的研究調査プログラム(PIPE)」について、2018年4月のレポートで報告しましたが、このプログラムの助成を受けたスタートアップが、新型コロナウイルス感染症の自己迅速検査キットを開発しました。 ★1

 
開発した BIolinker は、バイオテクノロジー分野の革新的調査研究の実施と、市場で価値のある製品やサービスの開発のためにPIPEの助成を受けた小規模企業の一つです。このプログラムの趣旨は、調査研究そのものに対してではなく、他企業との提携による、市場で商品となるソリューションの開発に対して公的資金を投じるというものです。

 
自己迅速検査キットの開発に用いられたのは組換えDNAの技術、すなわち、ウイルス関連タンパク質を生体外で発現させるため、遺伝子工学的に組み換えられたバクテリアを用いる技術です。タンパク質の分析後、人体で最適の応答を示し、大量生産できる可能性の高いタンパク質が確認されました。Biolinker は、ウイルスの変異しない部分の検知に注力し、オミクロン株を含むコロナウイルスのあらゆる変異型に反応する検査が開発されました。

 
プロジェクトはエンジェル投資家らの投資を受け、有効活性成分の生産拠点を拡大し、検査キットを販売する計画が進んでいます。検査は自宅で行うことができ、15分以内で結果が出るというものです。

 
国家衛生監督庁(ANVISA)による製品登録を待つ間、Biolinker は有効活性成分生産拠点の拡大に必要な各種認証の取得や、生産を行うためのパートナー企業との提携を進めています。製品は ANVISA の認証を受けた企業に納入されたのち、その企業で組立てと最終工程が行われ、週に5万キットの生産が見込まれています。

 
これは、民間企業の調査研究に投資することで、国内で開発された技術で有用な製品がつくられ、イノベーション、所得・雇用が生まれるという一つの良い事例といえるでしょう。


★1 参照リンク: Empresa paulista desenvolve autoteste que detecta todas as variantes do SARS-CoV-2


 

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
社会との交流、産学官連携 産学官連携
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