【海外センターレポート・ブラジル】高等教育と労働市場における女性の状況について

 
3月初めに、ブラジル地理統計院(IBGE)は「ジェンダーの統計:ブラジルにおける女性に関する社会指標」と題した調査の結果を公表しました。★1  この調査は、教育、保健、経済、生産活動への参加、政治活動、意思決定、人権保護にかかる女性の状況を概観することを目的に実施されました。本稿では、特に高等教育、労働市場における女性の状況のいくつかの側面について報告します。

 
女性は家事、仕事、育児等の活動の中心であることが多いなか、高等教育修了者の割合では男性を上回っており、2019年時点で、25~34歳人口の男性の18.3%、女性の25.1%が、45~54歳人口の男性の13.8%、女性の19.4%が高等教育を修了していることがわかりました。 ★2  ただし、高等教育を修了した教員のうち女性が占める割合は46.8%となっており、この割合を州別にみると、最も高いバイア州で51.8%、最も低いサンパウロ州で43.4%となっています。 ★3

 
学部別でみると、精密科学、テクノロジー分野の学生において女性は少数派で、コンピューター・情報科学、工学系の学部で学ぶ女子学生の割合はそれぞれ13.3%、21.6%にとどまっています。一方、福祉分野など人文科学系の学部で学ぶ女子学生の割合は88.3%と過半数を占めています。また、伝統的な学問の代表である法学、医学を学ぶ女子学生の割合はそれぞれ55.2%、59.7%となっています。★4

 
高等教育修了者は女性の方が多いものの、管理職者において女性が占める割合は37.4%で、その収入は、男性管理職者が得ている収入の77.7%にとどまっています。また、取締役級の役職者で見ると、女性役職者が得る収入は男性役職者のそれの61.9%と、男女間の差が拡大します。 ★5

 
ブラジルで女性への教育が導入されたのは18世紀半ばになってからのことで、以降今世紀に至るまで女性達が直面してきた数々の障壁を考えれば、男女間の格差是正に前進がみられるのは事実です。しかし、教育機会や労働市場における男女間格差の完全な是正に向けては、まだ課題が山積していると言えるでしょう。

 
ちなみに、サンパウロ大学法学部(1827年に国立単科大学として設立)の初の女性卒業者は1902年(明治34年)のことで現在の女子学生の比率は半数以上です。
 


★1 参照リンク (IBGE): Estatísticas de Gênero – Indicadores sociais das mulheres no Brasil
★2 参照リンク (R7 Educação): Estatísticas de Gênero – Indicadores sociais das mulheres no Brasil
★3 参照リンク (IBGE): Estatísticas de Gênero: ocupação das mulheres é menor em lares com crianças de até três anos

★4 同上

★5 同上


地域 中南米
ブラジル
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 学生の多様性
レポート 海外センター