【海外センターレポート・ブラジル】サンパウロ大学病院が設立75年を迎える*1)

 
 サンパウロ大学医学部臨床病院(Hospital das Clínicas da Faculdade de Medicina da Universidade de São Paulo)は2019年、設立75年を迎えました。同病院は医学教育の質を向上させること、サンパウロ州都および内陸部に住む人々に無償の医療サービスを提供することを目的としています。現在は複合医療施設の形態を成していますが、最初は、あらゆる医学領域の施設が集約された中央研究所(Instituto Central)として始まりました。

 
 その後、1950年代に精神医学研究所、整形外科研究所、外相学研究所が、1970年代に小児科学研究所、循環器学研究所が、1994年には放射線学研究所、そして2008年には、ラテンアメリカで最大規模のがん研究センターであるICESPが設立されました。

 
 同病院の面積は約60万平米で、105の手術室、2500床(全病院)を擁し、職員は19000人、年間で1800人が修士課程、博士課程へ入学します。2100人が研修医、マルチプロフェッショナル・プログラムに参加し、年間1400人が医学、理学療法、原語聴覚療法、作業療法の学科に入学します。また、過去4年間で様々な医学分野の論文が約9100本発表され、490万の薬剤供給ユニットが製造され年間760万の薬剤が供給されています。

 
 上記の数字は驚異的なものですが、同病院のような優れた医療施設における最も大きな影響は人的なもの、すなわち、様々な医学分野の治療、手術、療法によって影響を受ける人の健康状態と生死です。

 
 小児科学研究所のUenis Tannuri教授によれば、肝臓移植が初めて行われた時から30年間で、終末期の肝臓癌患者850人の肝臓が移植され、その命が救われました。また、ICESPでは4万7000人の患者の診察・治療が行われ、特別なケアを必要とする癌患者への対応が行われるともに、教育、研究、支援、技術的イノベーション活動が展開されています。

 
 しかし、全ての公的病院でそうであるように、財政面の問題が存在します。同病院は常に、代替的な収入源や民間セクターとの研究の提携関係を模索していますが、その優れた技術・学術的研究と大衆への医療サービスは変わらず継続されています。


<参照URL *1)> 
JORNAL DA USP: Hospital das Clínicas completa 75 anos de excelência

JORNAL DA USP: 75 anos do Hospital das Clínicas, um centro de excelência nacional

JORNAL DA USP: HC tem meta, até 2020, de chegar a 3 mil transplantes

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育、研究
社会との交流、産学官連携 産学官連携