【海外センターレポート・ブラジル】サンパウロ州における学術研究の状況について

 
2021年5月31日に、サンパウロ大学大学院担当副学長はFAPESPとの共催で、「サンパウロにおける学術研究の現状と未来」と題したオンライン
イベントを開催しました。イベントにはUSP、UNICAMPUNESPUNIFESPUFScarUFABC の大学院課程の各部門責任者、学界関係者
が参加しました。

 
FAPESP のルイス・エウジェニオ・メロ学術部長は、「CNPq の2021年予算は前年比51.1%減の12億1000レアルとなり 、CAPESの予算も、
それに比例して前年から削減された」と報告し、FAPESP は、学術研究の奨励において重要な役割を担っているにもかかわらず、今年の予算は
15億レアルにとどまり、資金不足を予算で解決できない状況を明らかにしました。

 
FAPESP の運営資金としてサンパウロ州の税収1%が充当されており、その金額は州の経済活動の状況に依存しています。2020 年の税収は
パンデミックの影響で減少したため、FAPESP の収入額も影響を受けました。しかし同時に、研究助成金の申請、奨学金申請の件数も減少しています。FAPESPはそれに対応すべく、予算削減とパンデミックの影響を考慮しながら、研究活動報告のデジタル化、評価フォーマットの簡素化、ウェビナー
の開催、学部生の研究計画を指導する博士研究員養成のプロジェクトなどを進めています。

 
イベントにはFAPESP の人文科学、社会科学、精密科学、工学、生命科学分野の調査コーディネーターらも参加し、研究計画の精度が高いこと、
パンデミックで予算不足に拍車がかかったことが相まって、助成金獲得の競争率が高まっていることを報告しました。また、研究助成金申請件数の
減少は、予算不足にとどまらず、既存の研究活動の維持や新たな研究計画策定へのモチベーション不足などを原因としており、回復戦略を打ち出して
現状打破に向けた取り組みを行う必要性を強調しました。

 
社会の全てのセクターにおいてパンデミック終息後の回復について議論されていますが、大学や研究機関においても、資金不足が悪化の一途を
たどる現況への適応が求められており、各研究の重要性や実用的・技術的適用性、社会の他のセクターを介した資金調達に関する検討が必要とされて
います。

 
FAPESP のルイス・エウジェニオ・メロ氏は、サンパウロのブタンタン研究所開発ワクチンの第三相試験にFAPESP に参加した例を紹介しました。
ブタンタン研究所の物理的インフラの整備にはイタウ銀行が投資しており、公的資金が投じられない部分を官民パートナーシップが補った例と
いえます。研究資金不足への懸念は広がる一方ですが、より少ない資金でより多くのことを実現するための戦略を立てることで、学界の将来への展望が
開けることが期待されます。


参照リンク: Em 2021, CNPq tem o menor orçamento do século 21


地域 中南米
ブラジル
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
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