【概要】
日本では、2014年12月に中央教育審議会から、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について文部科学大臣に答申があった。文部科学省は、当該答申を踏まえ、高大接続改革を着実に実行する観点から、今後取り組むべき重点施策とスケジュールを明示するものとして、「高大接続改革実行プラン」を2015年1月に策定し、同年3月からは上記中教審答申と高大接続改革実行プランの実現に向けた高大接続システム改革会議を開催し審議を行っている。一方、中国においても、2013年11月の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)にて審議・採択された「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定」(以下、「決定」という。)に、大学入試制度改革が含まれており、2014年9月には「入試・学生募集制度改革の深化に関する国務院の実施意見」(以下、「実施意見」という。)が日本の内閣に相当する中国国務院から公布され、その具体的な改革が緒に就いたところである。
本報告では、国家を超えた競争が続く世界の高等教育市場にあって、最大の人材供給源である中国が、現在、国内にどのような課題を抱え、また、その課題にどのように向き合おうとしているか、大学入試制度改革を中心に、中国の教育制度、政策やその動向について全般的な理解を深め、考察することを目的とする。以下では、まず、第1節において、中国の学校教育制度を公開されている各種統計データとともに概観し、基礎的、全体的な理解を深め、第2節では、中国教育オンラインの2015年高考調査報告(以下、「2015年報告」という。)から、中国大学入試制度の現状や課題を紹介した上で、上述の「決定」及び「実施意見」で公布された制度改革について、その内容及び政策の動きを見ていく。第3節では、入試を間近に控えた地方都市の高校3年生及び2015年9月に入学したばかりの北京市内の高校1年生の学校生活について、それぞれ姉、母親にインタビューを行った結果を紹介し、その差異を考察する。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。
【氏名】 横松 良介
【所属】 九州大学
【派遣年度】 2015年度
【派遣先海外研究連絡センター】 北京研究連絡センター