【国際協力員レポート・中国】中国の大学における教員業績評価 - 世界レベルの大学構築を目指して -

 
本稿は、中国の大学で教員の業績評価がどのように行われているのか、その特徴と効果及び課題を明らかにするものである。
 
近年、世界大学ランキングにおいて中国の大学がそのプレゼンスを高めている。2018年の上海交通大学の世界大学ランキングでは、72校がトップ500にランクインし、2004年の8校から大きく躍進している。同様に、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによる2019年の世界大学ランキングにおいても、清華大学が中国の大学として初めてアジア首位に立ち、トップ200には中国からアジアで最多の7校がランクインしている。
 
このように中国が世界大学ランキングにおいて躍進を見せている背景には、政府主導の大学改革の推進がある。1990年代後半から、世界水準の大学構築を目指す国家プロジェクトとして、中国は「211プロジェクト」、「985プロジェクト」を相次いで打ち出し、一部の大学に対する傾斜的・重点的な財源配分を通して、目覚ましい成果を挙げてきたが、助成対象の固定化、事業の評価検証の欠落などの問題で、社会側からの批判が相次いでいた。それを背景に新たに打ち出した「双一流プロジェクト」では、これまでの大学全体を強化対象とした「一流大学」の建設のほかに、特定の優れた学問分野を対象とした「一流の学科」の建設という二つのカテゴリーに分けて、助成機関を選定し、事業評価に基づいて、助成金の調整もしくは継続の可否を判断することになった。さらに、助成対象外の機関でも基準を満たせれば助成対象機関入りすることができる。この助成機関の動態管理は大学間競争を熾烈化させ、各大学は助成機関に採択されるためにこれまで以上に優秀な教員陣作りに取り組まざるを得なくなっている。
 
こうした政府からの強い圧力を受けて、現在、中国の大学は世界レベルの大学を目指して人事制度改革を行い、教員の潜在能力の開発に取り組んでいる。そこで本稿では、2018-2019年にかけて中国国内の大学教員を対象に実施したインタビュー及びアンケート調査をもとに、各大学が実際にどのような業績評価制度を整備しているのかを明らかにしていく。特に、業績報告、定期評価、インセンティブの付与、昇任に焦点を当て、これらがいかに運用されているのか、その特徴や効果、課題を明らかにすることで、日本で人事制度改革を推進する大学関係者の一助としたい。
 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:1MB)
 
【氏名】 井上 侑子
【所属】 大阪大学
【派遣年度】 2018年度
【派遣先海外研究連絡センター】 北京研究連絡センター

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育、研究
国際交流 国際化
人材育成 教員の養成・確保
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研究支援 研究評価