【概要】
欧州の高等教育制度改革が推進される中で、各国においてエラスムス(Erasmus)プログラム等の実施により、外国経験を通じて国際感覚を持つ優秀な人材を育成することが、欧州政策の重要課題の1つとされている。ドイツ国内ではそれを受け、高等教育システムの大規模な改革が行われ、政府や民間レベルで、学生への外国経験の推奨と、優秀な外国人研究者の獲得を重要視した、様々な施策及び助成プログラムが設けられている。ではいかに、国際的な経験が個人や地域にとって優位性を得ることにつながるのだろうか。
本調査の動機は、著者がドイツにおいて、国内及びEU圏内における教育研究の動向を日常的に追うようになり、多くの課題を抱えながらも政策として教育改革を重点的に進めている状況を知り、それらの効果をより詳しく調べてみたいと考えたことによる。大学時のイギリス留学と今回のドイツ滞在の経験を通しても、EUの包括的な主導と、各国の方策やねらいは必ずしも一致するものではないと感じられた。特にドイツは欧州連合の牽引的立場であると見做される場合が多いが、今回はドイツとEUを個別に考察することにより、ドイツという1地域として、またEU圏全体として、国境を超えた競争および協力関係が、どのように進められているかという点に着目したい。また著者が日本の大学の国際交流に携わってきたことからも、本報告書が日本の今後の国際戦略を考える上で、僅かながらでも一助になることを期待するものである。
本報告書では、1999年のボローニャ宣言以降の欧州高等教育改革の動向をテーマに、特にドイツ国内及びEU政策の両視点から、人材移動を通じての優秀な学生・研究者の獲得・育成に焦点を当て、国際流動性と教育・研究の質保証の関連性について考察する。
なお、報告書全文はこちら(PDF)から閲覧可能。
【氏名】 中沢 有美
【所属】 東京工業大学
【派遣年度】 2014年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ボン研究連絡センター