【国際協力員レポート・タイ】タイの高等教育機関の国際化 ー近年の高等教育政策と「アジア高等教育圏」の展開ー

 
 近年、日本においては高等教育における国際化が大学改革の中でも重要事項として広く関係者に認識されるところとなっている。文部科学省は大学の国際化支援事業として、留学生受入促進強化事業である「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業(グローバル30:G30)」(2009年度-2013年度)や、総合的に国際競争力を高める大学改革を断行し、世界大学ランキングトップ100を目指す大学を支援する「スーパーグローバル大学創生支援事業(SGU)」(2014年度-)等を実施し、政策に主導される形で大学の国際化が進められている。

 
 グローバル化が急速に進んでいる世界の高等教育情勢の中、高等教育の国際化は日本のみでなく全世界的な潮流と言えるであろう。

 
 一方で、アジアでは国境を越えた高等教育のネットワーク形成の動きが活発になっており、各国政府や地域機構によって作られた教育ネットワークや留学プログラムが域内の学生や教職員のモビリティを促進し、高等教育のネットワーク、「アジア高等教育圏」が誕生しているとの指摘がある *1)

 
 例えば、筆者が勤務するJSPSバンコク研究連絡センターが所在するタイは、ASEAN大学連合(AUN)、アジア太平洋大学交流機構(UMAP)、東南アジア国際学生モビリティプログラム (AIMS)、大メコン圏大学コンソーシアム(GMS-UC)など、複数の国際的高等教育ネットワークに属している。

 
 本レポートでは、タイでは、高等教育の国際化についてどのような政策が取られてきたかを確認しながら、タイ及びタイの高等教育機関が参加している国際ネットワークにはどのようなものがあるのか概観しつつ、タイにおける高等教育の国際化の現況について考察していきたい。

 
 第2章では、近年のタイ高等教育政策における国際化について、特に留学生の受入動向に着目しながら確認していく。第3章では、タイ及びタイの高等教育機関が参加している国際的な高等教育組織やネットワーク及びプログラムにはどのようなものがあるのか、その概要を見ていく。また、このような国際的な取り組みについて個々の大学はどのような認識をもっているのか、タイのメーファールアン大学の国際関係担当副学長、Dr. Nantana Gajaseniにインタビューを行うことができた。第4章ではこのインタビューを掲載する。 第5章でまとめと考察を述べたい。
 


*1) 杉村美紀「アジア高等教育圏のダイナミクス」リクルートカレッジマネジメント, 204号May-Jun, 2017
 

報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:1MB)
 

【氏  名】  臼井 真希(うすい まき)
【所  属】  三重大学
【派遣年度】  2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 バンコク研究連絡センター

地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 国際機関レベルの取組、政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育
国際交流 国際化
レポート 国際協力員