タイは、1961年以降5年毎に社会開発計画が策定 され、それに基づいた政策や戦略により経済発展を遂げてきた。しかし、タイ政府は、先進国入りを前に成長が停滞し、そこから抜け出せなくなってしまう状態、いわゆる「中進国の罠」を懸念しており、その罠からの脱却のための手段として科学技術 を重要な位置付けとし、産業の高度化や研究開発人材の育成を急務と考えている(4章にて後述)。ただし、タイでは科学技術に対する国民全体の認識や研究開発人材に対する評価は決して高いとは言えないのが現状である。
また、2015年12月にはASEAN経済共同体(AEC)が発足し、今後ASEAN圏内での経済的、学術的交流はさらに活発になることが期待される。タイは地理的な優位性を生かし、その中でイニシアティブを取りたいとところだが、同じASEAN圏内ではシンガポール及びマレーシアに経済面でも学術面でも遅れをとっていることが指摘されている。加えて、振興メコンに属するカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(CLMV)がASEANでの新たな市場として注目されており、経済面だけでなく学術面でも今後さらに発展していくものと思われる。
本報告書では、他国との比較によるタイの学術的側面の評価をはじめ、タイの科学技術関連機関、教育機関等での政策や取組みを紹介する。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。
【氏名】 大田 敏雄
【所属】 広島大学
【派遣年度】 2016年度
【派遣先海外研究連絡センター】 バンコク研究連絡センター