【国際協力員レポート・タイ】タイにおける研究助成機関の取組-国際交流と人材育成の観点から-

【概要】

2015年QS分野別世界トップ100大学ランキングにおいて、タイの9研究大学のうち4大学がランク入りするなど、近年、タイの大学における教育・研究は順調にレベルアップしている。しかし、同じASEAN圏内のシンガポールやマレーシアと比較すると、タイの学術研究の発展は遅れをとっていることが指摘されており、さらなるレベルアップのために関連機関がもっと多くの資金援助を行うべきだ、との意見もある。個人の研究費や大学の資金で研究費が賄われているケースも多く、筆者がタイの大学において日本との共同研究を行う場合のタイ側研究者の経費の出所を尋ねた際も、競争的資金ではなく大学の資金で賄うとの回答が多数あった。JSPSバンコク研究連絡センターを訪問する日本人研究者からも、タイ側研究者はどのような研究助成を受けられるのかについて情報収集が難しいとの意見があった。

またタイでは優秀な若手研究者育成も課題となっており、前述の9研究大学のような一部のトップレベルの大学では博士号を取得していることが教員採用の必須条件となっているものの、それ以外の大学では博士号取得が採用の条件となっていないため、博士号を取得していない教員も多く、また企業でも修士号で十分として博士号取得者への需要は高くないのが現状である。

この報告書は、タイにおける研究助成機関の取り組みについて、国際交流と人材育成の観点からまとめたものである。タイ国内の機関に限らず、タイの研究者に対する助成を行う国外の機関についても調査を行った。

第2章では、チェンマイ大学において実施した日本人研究者へのインタビューを掲載する。このインタビューでは、日本・タイ両方で研究活動に従事され、日本の研究助成制度や国際共同研究事業についてもよくご存じの日本人研究者の観点から、タイ国内の大学の研究助成に係る現状についてお話いただいた。

第3章では、タイの研究助成機関の連絡ネットワークであるTRONと各機関の概要を紹介する。

第4章では、TRONの構成員でありタイの代表的な研究助成機関である、タイ学術会議(NRCT)とタイ研究基金(TRF)へのインタビューを掲載する。JSPSとの共同事業を実施しているNRCTへのインタビューでは、申請プロセスや事業スキーム等、日本側とは異なるタイ側独自の状況について、また上述のTRONについて話を伺うことができた。一方TRFについては、研究支援だけでなく修士・博士・PD等の若手研究者を対象としたプログラムを数多く実施していることから、国際交流と若手養成に係るプログラムについて特に詳しくお話を伺った。

第5章では、2015年6月に開催されたヨーロッパの研究機関・資金配分機関による事業説明会“Advancing your Research Career in Europe: Funding and Fellowship Opportunities for Researchers in Southeast Asia”において収集した情報に基づき、タイにおけるヨーロッパの研究助成機関の活動と研究助成プログラムを紹介する。

なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。

【氏名】 辻 修子
【所属】 鹿児島大学
【派遣年度】 2015年度
【派遣先海外研究連絡センター】 バンコク研究連絡センター

地域 西欧、中東欧・ロシア、EU、アジア・オセアニア
ドイツ、イギリス、タイ、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、予算・財政、政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育、研究
国際交流 国際化、学生交流
人材育成 若手研究者育成、研究者の雇用
社会との交流、産学官連携 産学官連携
レポート 国際協力員
研究支援 研究助成・ファンディング、研究者向けフェローシップ