【国際協力員レポート・スウェーデン】日本及び北欧諸国における博士号取得者の雇用状況の比較と考察

 
「博士号取得者」と聞いてどのようなイメージをもつだろうか。2018年2月12日の日本経済新聞に掲載された新聞の見出しである「博士採用増で生産性低下」が、筆者にとって大きな衝撃となり、今回の研究報告書を作成するに至った。この記事の元となった、日本経済研究センターの資料を読むと、博士の採用増が必ずしも生産性の向上につながっていないという現状が示されていた。日本の企業では、高度な専門知識を持った人材である、博士号取得者を使いこなせていない可能性、及び企業の現場で役に立つ人材が大学の中で育っていない可能性が指摘されている。
 
一方で、筆者がストックホルム研究連絡センターへ着任してから、様々な研究機関や資金配分機関を訪問する機会をいただいたが、会う担当者の方たちの中で、博士号を肩書きとしている方が少なくないことに気づいた。スウェーデン高等教育局に掲載された記事「Doctoral degree leads to good position in the labour market」から伺いとることができるように、スウェーデンでの博士学位取得者のイメージは、日本のそれより少なくとも悪いものではないだろう。海外の企業では、博士号取得者は即戦力として扱われ、期待も高いというイメージを私自身が抱いていただけに、日本でのこの結果は意外で、また、この記事の見出しが、日本人にとっての博士号取得者のイメージを物語っているのではないかと感じた。
 
博士号取得者の進路として、一般的には、大学教員が予想されるが、近年では、国立大学が人件費削減を目的とした教員ポストの削減もみられ、今後、大学教員としてのポストが増える見込みはないことが懸念されている。今後、博士号取得者はどのような道を歩んでいくのだろうか。本報告書では、日本と北欧諸国の博士号取得者の進路の状況、及び博士課程の教育上の相違点に着目する。そして、博士号取得者及び取得見込者へ行った、彼らを取り巻く環境についてのインタビューを通して、日本の博士号取得者の雇用状況について比較と考察を行い、今後、大学職員として、彼らのキャリア形成に関してサポートできる可能性について探りたい。
 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:1MB)
 
【氏名】 伊藝 亜樹恵
【所属】 琉球大学
【派遣年度】 2018年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ストックホルム研究連絡センター

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 学生の就職、研究者の雇用
レポート 国際協力員