日本におけるファカルティー・ディベロップメント(FD)を簡単に振り返ると、1999年に大学設置基準で各大学におけるFDの実施が努力義務化されたことが一つの出発点となる。2007年には大学院設置基準の見直し、2008年には大学設置基準の見直しが行われ、大学院教育課程及び学士教育課程においてFDの実施が義務化された 。その後、各大学はFD推進のための委員会やセンターなどを設置し、2009年には国立教育政策研究所FDer研究会が作成した『大学・短大でFDに携わる人のためのFDマップと利用ガイドライン』などを参考にしながら、それぞれの大学がなんらかのFDに取り組んでいる。しかし、『大学教育センターから見たFD組織化の動向と課題』によると、日本のFDの現場は次のような問題を抱えているという 。
① | 一方向的な講義にとどまり、必ずしも、個々の教員のニーズに応じた実践的な内容になっておらず、教員の日常的な教育改善の努力を促進・支援するに至っていない。 |
② | 教員相互の評価、授業参観など、ピアレビューの評価文化がいまだ十分に根付いていない。 |
③ | 研究面に比して教育面の業績評価などが不十分であり、教育力向上のためのインセンティブが働きにくい仕組みになっている。 |
④ | 教学経営のPDCAサイクルの中にFDの活動を位置付け、教育理念の共有や見直しに生かす仕組みづくりと運用がなされていない。 |
⑤ | 大学教育センターなどFDの実施体制が脆弱である。例えば、FDに関する専門的人材が不足している、学内で各学部の協力を得る上で困難がある、FD担当者のネットワークが発展途上、といったことが聞かれる。 |
⑥ | 学協会による分野別の質保証の仕組みが未発達であり、分野別FDを展開する基盤が十分に形成されていない。 |
⑦ | 非常勤教員や実務家教員への依存度が高まる一方で、それらの教員の職能開発には十分目が向けられていない。 |
そこで、スウェーデンの大学ではFDがどのように行われているかを調べ、そこから日本大学のFDに活かせるアイデアを探ることが本報告書の目的である。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。
【氏名】 北島 江里子
【所属】 東京工業大学
【派遣年度】 2016年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ストックホルム研究連絡センター