【国際協力員レポート・イギリス】Green Impact -持続可能型社会実現に向けたボトムアップな取組-

 
気候変動への取組がこれまで以上に急務となっている。2021年8月に、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)から気候変動に関する報告書が公開され、その中で「大気、海および陸地における温度上昇は人間活動の影響を受けていることは明白だ」★1 と述べている。また、2021年11月に英国・グラスゴーにて COP26 が開催され、気候変動対策について最終的に、世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるための削減強化を各国に求める「グラスゴー気候合意」が採択され、その中では「世界の二酸化炭素の排出量を30年までに10年比で45%削減し、今世紀半ばには実質ゼロにする」ことや「排出削減対策を講じていない石炭火力発電の段階的な削減と、化石燃料に対する非効率な補助金の段階的な廃止に向けた努力を加速し、クリーンな発電方法とエネルギー効率の向上を進める」★2 などが述べられている。個人的には、これまで気候変動対策へ消極的だった国々がネット・ゼロ(二酸化炭素排出量実質ゼロ)達成に向けた期限を宣言した★3 のは印象的な出来事だった。

 
日本は、2020年10月に菅 義偉元内閣総理大臣が2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言している。★4 また、2021年7月29日に、大学が、国、自治体、企業、国内外の大学等との連携強化を通じ、その機能や発信力を高める場として、文部科学省、経済産業省、環境省、188の大学による「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」(大学等コアリション)★5 が立ち上げられ、今後、国や組織主導のトップダウンによる取組がより加速していくと思われる。しかし、真に気候変動対策を実施していくには、個々人の意識改革や行動変容を促すボトムアップによる取組も同時に行うことが必要なのではないか。

 
英国では、個々人の行動変容に焦点を当てた組織のサステナビリティを促進するGreen Impactというプログラムが2008年より行われており、大きな成果を挙げている。学生組織が主体となり始まったこのプログラムは、この十数年の間に、英国内の大学で実施されるだけでなく、自治体や企業でも取り組まれている。また、ここ数年は国外にも展開しており、オーストラリアやニュージーランドなど計8カ国の大学がプログラムに参加している。

 
本報告書では、Green Impact の開発組織である National Union of the Students と現在運営を行っている SOS-UK の活動について説明する。次に Green Impact の詳細とそのプログラムに参加している各大学の取組等について説明し、Green Impact によってどのような効果が得られているのかについて述べる。Green Impact は、2021年より運営窓口が日本にも設置されており、日本の大学も本プログラムへの参加が可能となっている。英国の大学における取組状況について情報提供を行うだけなく、日本の大学が本プログラムへ参加を検討する一助となれば幸いである。

 

なお、報告書全文は こちら から閲覧可能(PDFファイル:約 1MB)


★1 BBCニュース、Climate change: IPCC report is ‘code red for humanity’ (2022年1月25日アクセス)

★2 日本経済新聞、COP26の成果文書「グラスゴー気候合意」要旨 (2022年2月2日アクセス)

★3 World Resources Institute HP, How National Net-Zero Targets Stack Up After the COP26 Climate Summit (2022年1月25日アクセス)

★4 首相官邸HP、第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説、2020年10月26日公開 (2022年1月25日アクセス)

★5 文部科学省HP、「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」の設立について、2020年7月29日公開 (22年1月25日アクセス)


【氏  名】  平山 祐
【所  属】  熊本大学
【派遣年度】  R2
【国内研修所属課・室】 研究協力第二課
【派遣先海外研究連絡センター】 ロンドン


地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
国際交流 国際化
レポート 国際協力員