【国際協力員レポート・イギリス】Athena SWAN ―英国における女性研究者支援―

 
新型コロナの感染拡大は、世界中に影響を与えたが日本においては男女共同参画の遅れにより、とりわけ女性への影響が深刻であり改めてジェンダー不平等に対する問題意識が高まったと言える。社会的、経済的、政治的等様々な側面から問題点が挙げられるが、本稿では女性研究者を取り巻く環境について改めて考えたい。

 
私がこの課題を取り上げた理由は、ロンドン研究連絡センターでの研修において、在英日本人女性研究者にインタビューを行ったのがきっかけである。彼女と同世代(40代)の中堅女性研究者は、パートナーの異動に伴いポジションを獲得することが難しく、やむを得ず研究者としてのキャリアを諦めざるを得ない女性が多かったが、当時と比べて日本の女性研究者支援制度も徐々に変化してきたのは事実である。しかし、女性研究者を支援する体制はあるものの現在も諸外国と比べ女性研究者の割合は依然として低く★1 (図1)、特に上位職に占める女性研究者の割合が低いのが現状である。
★2(図2)

 

 

            << 図1:研究者に占める女性の割合(国際比較)>> 

 

 

          <<図2:大学における職位別の女性教員の在籍割合>> 

 
インタビューの中で彼女が話していた通り、現在の中堅、上位職の女性研究者は当時の厳しい男性社会を生き抜いてきたごく僅かなロールモデルであり若手研究者には並大抵の努力では成し遂げられないように感じてしまうことが多いようだ。また、女性研究者の活躍を促進する一方で、中堅職以上の女性研究者のニーズが高まり、本業以外の仕事負担が増えているのが現状である。このように、女性研究者支援の方策を検討することで生じる新たな問題点や課題を見つめ直す必要があると考えた。

 
そのため本稿では、女性研究者促進の好事例として英国の Athena SWAN について調査する。初めに制度概要、表彰制度の仕組み、2020年度以降の制度改定を中心に説明する。次に、Athena SWAN に参加する英国大学の担当者への聞き取り、アンケート調査を行い、実態を明らかにする。最後に、日本の女性研究者支援をいくつか紹介する。

 

なお、報告書全文は こちら から閲覧可能(PDFファイル:約 1MB)


★1 BBCニュース、Climate change: IPCC report is ‘code red for humanity’ (2022年1月25日アクセス)

★2 日本経済新聞、COP26の成果文書「グラスゴー気候合意」要旨 (2022年2月2日アクセス)


【氏  名】  大城 萌子
【所  属】  東海大学
【派遣年度】  R2
【国内研修所属課・室】 国際企画課
【派遣先海外研究連絡センター】 ロンドン


地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
国際交流 国際化
レポート 国際協力員