【国際協力員レポート・アメリカ】米国大学におけるダイバーシティ政策 - カリフォルニア大学バークレー校の事例から -

 
皆さんは「ダイバーシティ」と聞いてどのようなイメージが浮かぶだろうか。ダイバーシティは日本語で「多様性」と訳されるが、具体的に「多様性」が何を指し示すのかという定義は文化、社会、個人間で異なっている。一般的に日本では、「ダイバーシティ=多様性=女性の社会活躍」が連想されることが多いが、ダイバーシティはもはや女性の社会活躍のみを指し示す言葉ではないだろう。では、未来の社会を担っていく学生たちが学ぶ、日本の大学での「ダイバーシティ」について私たちは今後どのように考えるべきだろうか。
 
国際協力員として日本学術振興会サンフランシスコ研究連絡センターへ赴任した際に一番驚いたことは、オフィス所在地であるバークレーの人種の多様性であった。電車の中、駅構内、レストラン、学校、どこを見渡しても言語や文化の異なる多種多様な人々が共存し、外見のみにおいて誰が「外国人」であるかなどということを判断するのはもはや不可能である。また、バークレーでの生活において、そのように人々を区別する必要性を感じない。このような状況において、「私は本当にアメリカに住んでいるのだろうか?」という問いが度々浮かんだ。そして、その問いと同時に「そもそものアメリカという国に対する私のイメージとは何だったのか」、「いわゆる“アメリカ人”とはどのような人を指し示すのか」、と様々な問いが浮かび、いかに国や人種に対しての古いステレオタイプを抱いていたのかということを痛感した。ここバークレーには人種のみならず人々の多様性を許容する文化があることを生活の端々から感じることができる。私はこの地で「ダイバーシティ」についての考え方や政策について学ぶことで、今後の日本の大学でのダイバーシティ政策へのヒントが得られるのではないだろうかと考えた。
 
筆者の所属する立命館学園では2030年に目指すビジョンとして、「学園ビジョンR2030-挑戦をもっと自由に」を掲げている。この学園ビジョンは大きくかつ急激に変化する社会、先を見通すことが難しいこれからの社会動向を見据え、未来社会のあるべき姿を積極的に提案し、その実現に挑戦することを目指して提案された。このビジョンの中で提案される学園像の一つに、「ダイバーシティ&インクルージョンを実現する学園」が設定されている。ダイバーシティ&インクルージョンを実現する学園とは、「個人、組織、地域、国、宗教、風習、文化をはじめとする社会のあらゆる多様性を前提とし、個人の意見や考え方の違いを理解・尊重し、他者と協働しながら多様な「つながり」を育む学園」と定義されている。このように筆者の所属機関でも「ダイバーシティ」や「インクルージョン」が今後のビジョンとして一層重要視されるようになってきている。また、文部科学省の「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ女性研究者研究活動支援」事業や、経済産業省の「ダイバーシティ経営によって企業価値向上を果たした企業」を表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」事業など、教育研究現場および産業界でもダイバーシティに着目した事業が行われている。
 
このような背景から、米国大学においてのダイバーシティ政策、具体的には多様な人々が互いを尊重し共存する環境がどのような政策によって維持されているのかを学びたいと考えるようになった。本稿では、カリフォルニア州バークレーに位置するカリフォルニア大学バークレー校(以下、UCバークレー)のダイバーシティ政策について調査し、日本の大学での「ダイバーシティ」を今後どのように考えていくのか、筆者なりの考えを述べたい。
 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:2MB)
 
【氏名】 段野 真那
【所属】 立命館大学
【派遣年度】 2018年度
【派遣先海外研究連絡センター】 サンフランシスコ研究連絡センター

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 学生の多様性
レポート 国際協力員