【国際協力員レポート・アメリカ】米国の高等教育機関の留学生受け入れと国際化

 

 近年、少子高齢化が進む先進諸国では将来の労働力の不足を見据え、優秀な留学生の獲得競争が激しくなり、先進諸国では国を挙げた留学生の受け入れ政策を実施している。
 

 日本政府も外国人留学生の受け入れについて、「留学生30万人計画」を策定し、2020年を目途に実現を目指し、留学生の受け入れ及び日本人学生の海外留学を促進してきた。現在、留学生の受入数の目標値の達成に近づいているものの、大学の国際化や留学生のアジア出身者の多さ等新たな課題が生じている。今後は「ポスト30万人計画」を見据え、優秀な留学生を確保するため、これまで以上に戦略的な受け入れ政策が必要となっている。
 

 上記の状況下で、日本は高等教育の国際化を掲げ、文部科学省では日本の高等教育の国際評価を高めるため「スーパーグローバル大学創成支援事業」を通じて大学の国際化を支援している。「日本再興戦略 2016」(平成 28 年6月2日閣議決定)においては具体的な数値目標を示しており、2026年までに世界大学ランキングトップ 100 に 10校以上が入ることを目標に掲げている。世界大学ランキング2020において、100位内にランクインした日本の大学はTimes Higher Education(THE)では2校、Quacquarelli Symonds(QS)では5校となっている。
 

 一方、これまで留学生受け入れ国の首位を独走しており、日本人留学生を最も多く受け入れている国でもある米国は、現在も世界の留学生の21%を受け入れており、世界大学ランキングトップ100のランクイン数はTHEでは40校、QSでは29校であり、依然として世界トップの数である。しかし近年、中国等新たな留学生受入国の台頭も見られ、留学生を取り巻く状況は変化している。これまで一人勝ちであった米国の新規留学生の受け入れ数は年々減少傾向にあり、過去三年間で新規留学生数は減少し続けている。新規留学生の獲得が厳しくなっている状況を受け、米国の高等教育関係者は留学生の獲得に関して危機意識を持っている。これまで米国は国や政府としての留学生受け入れや米国学生の留学促進、高等教育機関の国際化についての方針は持たず、高等教育機関が独自の考えに基づいて国際化を進め、留学生数を増やし続けてきた歴史がある。新規の留学生数が減少している中、米国の高等教育機関、政府、教育協議会の取り組みについて調査を行うことで、日本の高等教育の国際評価を高め、さらには優秀な留学生確保のための知見が得られると考え、

  1. 世界ならびに米国の留学生受け入れ状況の確認
  2. 米国務省、米国教育協議会、米国2大学へのインタビュー

の二つの取り組みを実施した。本稿ではこの取り組みによって得られた知見から、日本の高等教育の国際評価の向上に役に立つ取り組みについて検討する。


報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:約1MB)
 
【氏  名】  阿部 由樹(あべ ゆき)
【所  属】  中央大学
【派遣年度】  2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ワシントン研究連絡センター

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
国際交流 国際化、学生交流
レポート 国際協力員