【国際協力員レポート・アメリカ】「女性」研究者と多様性 - 米国の経験から学ぶ支援の在り方 -

 
米国は女性の「声」を無視できない状況にある。「#Metoo」や「#Time’sup」といったムーブメントを契機として今まで黙止されてきたセクシャル・ハラスメント問題が一気に表面化し、それらは日々メディアで報じられている。また、2018年11月に実施された中間選挙では下院における女性議員の躍進がみられ、女性下院議員数は米国歴史上過去最高を記録した。
 
そして、筆者が渡米して間もない5月、米国国立科学財団(National Science Foundation:NSF)で開催された米国科学委員会(National Science Board:NSB)の会議を傍聴した際、NSF長官とNSB議長が両名とも女性という事実に非常に驚いたことは今でも覚えている。その女性がごく自然に組織等のトップに立つ景色に対する「驚き」は、無念にも日本における性別役割分担が自己に内在化されていることを実感させた。
 
米国社会では日本に比べ女性の進出が自然に受け止められているような印象を受けた。女性の活動が周囲の女性にポジティブな影響を与え、社会に変化をもたらすようなエネルギーが感じられる。しかし世界各国のジェンダー・ギャップ指数を報告した「The Global Gender Gap Report 2017」によると米国は144カ国中49位であり、順位や数値的には女性と男性の機会均衡が確立された国ではないということがうかがえる(World Economic Forum 2017)。だが日本が114位であるという事実を鑑みると米国と日本の差は歴然であり、冒頭の例が社会の僅か一部分を切り取ったものであるとしても、米国における女性参画は日本と比較した場合において可視化された状況になりつつあると考えられる。
 
では、女性研究者を取り巻く状況はどのようなものであろうか。科学におけるイノベーションには女性やマイノリティ・グループの参画が必要とされており、多様性の実現は科学の発展にも繋がるとされている。本稿では日本との比較を交えながら米国における女性研究者の置かれた現状および女性研究者の参画における課題、そして課題解消に向けた施策等について考察する。そして、その米国の取組を参考にした上で日本の女性研究者支援ついて検討する。なお高等教育の発展過程や制度、研究環境を含めて全く異なる日本と米国を全く同じ視点から比較することは適切ではないが、他国から学ぶことの意義は大いにあると考えられる。
 
第2章では統計データにより日本および米国における女性研究者等数の推移を考察し、各国の女性の高等教育進出の歴史についても概観する。第3章ではデータでは把握できない米国の女性および女性研究者を取り巻く現状や課題をインタビューによって明らかにし、続く第4章ではその課題解消のための法や制度的支援、そして米国において重要視されている多様性の概念について述べる。そして最後に米国の実情を踏まえて、日本における女性研究者支援の在り方について検討したい。
 
報告書全文は)こちらから閲覧可能(PDFファイル:1MB)
 
【氏名】 吉田 澪
【所属】 京都大学
【派遣年度】 2018年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ワシントン研究連絡センター

地域 北米
アメリカ
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 研究
国際交流 国際化
人材育成 研究人材の多様性
統計、データ 統計・データ
レポート 国際協力員