【ニュース・中国】中国の大学入試「高考」物理全国版問題、専門家が講評:偏った奇問はなく、一般物理学の考査を重視

 
6月8日は2022年度の中国の大学入試「高考」の2日目だ。この日の午前中に、理科総合の試験が終了すると、理科総合に関する話題が「微博(ウェイボー)」の検索上位に急浮上した。

 
今年の「高考」物理全国版問題にはどんな問題が出題されたのだろうか。問われたのはどんな内容や能力なのか。6月8日午後、本紙は教育部教育試験院から「高考」物理全国版甲、乙巻試験問題の批評と分析を入手した。

 
「高考」問題の批評分析専門家によれば、2022年度「高考」物理は「立徳樹人(徳育重視の人材育成)」の本質的な任務を実行し、正しい人材育成の方向を堅持し、学生の徳・知・体・美・労の全方位的な発達を促す出題だった。また、正しい道を守りつつ革新を堅持し、「高考」の評価システムに依拠し、基礎を深め、重要能力に対する考査を際立たせ、教育と試験の整合性を強化し、学生の中核的素養の育成を促し、素質教育の発展を支える出題だった。試験問題に偏った奇問はなく、学校教育において、課程標準(学習指導要領に相当)に準拠することと、教えるべきことを教えるよう導く効果があった。また、試験問題は一般物理学の考査を重視し、「ひたすら問題集を解きまくる」行為を減らすよう導く効果もあった。

 
高校物理の中核を為す主要内容の考査を重視、偏った奇問はなし

 
2022年度「高考」物理の試験問題は、高校物理の中核を為す主な内容の考査を重視し、偏った奇問はなく、学校教育において、課程標準に準拠することと、教えるべきことを教えるよう導く効果があった。「高考」の物理は、考査の基礎性を重視し、定性および半定量分析を強化し、具体的シチュエーションにおける物理学の本質に対する理解を問うことで、枝葉末節の知識の弁別や、典型的パターン、テクニックを駆使することを追求するのではなく、知識をより深く掘り下げ、物理学に対する全般的・全体的認識を形成できるよう学生を導く効果があった。また、試験問題は一般物理学の考査を重視し、「ひたすら問題集を解きまくる」行為を減らすよう導く効果もあった。

 
たとえば、全国版甲巻第18問目では、荷電粒子が静止状態から一様電界および一様磁界中で運動を始めるまでについて出題され、電界の強さとローレンツ力、および両者の作用の仕方の特徴に対する深い理解が問われた。全国版甲巻第20問目では、電気回路、応力、運動に対する分析と推理力を問う問題が出題され、運動と相互作用、エネルギーについてしっかり理解しておくことが求められた。全国版甲巻第21問目では、電界の強さと重力の作用下で荷電ビーズが運動するという設定で、エネルギーの変換と保存の法則、運動の合成と分解といった物理学の概念や等価浸透について深く理解しているかが問われた。

 
また、全国版乙巻第15問目では、ニュートンの運動の法則の同時性やベクトルに対する理解が問われ、運動と相互作用についてしっかり把握しておくことが求められた。全国版乙巻第16問目は、今までにない設問で、大きい円の端から小さい円が滑り下りるとき、その速度と正比例を成す物理量や、浸透の定性・半定量分析の方法について考えさせる問題が出題された。全国版乙巻第22問目では、実験における逐差法の応用が出題された。汎用分析法に対する出題を強化することで、学校教育における基礎実験を強化する狙いがあった。

 
理論と現実の連携強化、2022北京オリンピックスキー・ラージヒルや「天宫二号」などが出題

 
2022年度「高考」物理の試験問題は、実際の生産活動や生活、科学技術の進歩を感じられる実際のシーンと結びつけ、物理学的モデルの構築力や、学んだ物理学的知識を臨機応変に活用して現実問題を解決する力を問い、学生の核となる素養の育成と発展を促した。

 
たとえば、全国版甲巻第14問目では、学生にスポーツを愛する気持ちを持ってもらいたいという狙いから、2022北京オリンピック会場の1つ首鋼スキー大ジャンプ台を背景に、学科の内容とスポーツとを結びつけた問題が出題された。全国版甲巻第15問目では、日常生活における物理学的現象に注目し、学んだことの応用を促す狙いから、高速列車がトンネルを通過するという、実際の生活に深く関係したシーンが設定された。全国版甲巻第25問目では、科学と実践を結びつけ、計器設計に含まれた物理思想を理解し、科学に対する真摯で厳かな態度を育成するという狙いから、微小電流を測定可能な走光式検流計に関する問題が出題された。

 
さらに、全国版乙巻第14問目では、「天宮二号」で自由に遊泳する宇宙飛行士にスポットを当て、宇宙での無重力状態に対する本質的理解を促すとともに、中国の新時代における重要な科学技術の成果を取り上げることで、学生の民族としての誇りや自信を高めることを意図した。全国版乙巻第18問目では、スマートフォンを用いた地磁気測定を取り上げ、提示されている測定結果に基づき、測定地点とy軸正方向の指向状況を論証し、科学技術が日々の暮らしと学習に影響を与えていることを実感させ、物理実験により何かを論証することに対する興味を掻き立てることを狙った。全国版乙巻第21問目では、衛星上で利用可能な荷電粒子測定装置を取り上げ、学生が注目する科学技術分野を拡張し、ミクロの世界との距離を縮めることを狙った。

 
実験計画を強化、学生の実験探究力の発展を誘導

 
実験は学生の物理学的素養を養う重要な手段であり方法である。2022年度「高考」の物理の試験問題では、実験原理の理解、実験計画の策定、実験装置の選択、基本的装置の使用法、実験データの処理、結論の出し方と解釈などに関する内容を強化し、学生の実験能力や科学的探究力を問うた。これにより、高校における実験教育の強化や、学校教育における実験・探究の重視を促し、学生が自ら手を動かして実験を行い、実験能力を向上させるよう導く効果があると期待される。

 
たとえば、全国版甲巻第22問目では、実験目的と提供されている実験器具を基に、マイクロアンペア計の内部抵抗を測定する実験電気回路図を描く問題が出題され、学生の探究心が問われた。全国版甲巻第23問目では、エアートラックを用いた弾性衝突に関する実験の全過程が示され、結論部分で、理論と実験結果を結びつけて論証することが求められた。また、全国版甲巻第24問目および第25問目も実験に関する出題で、学生の核となる素養の育成における物理実験の重要性と効果を際立たせることにより、高校で十分な実験授業を行い、学生がさまざまな科学探究活動を行う過程で実験技能とイノベーション力を高めていくことを狙った。

 
さらに、全国版乙巻第22問目では、レーダーによる高速飛行物体の位置探査という場面で、学生が見慣れた記録タイマーのテープの処理方法を柔軟に応用して答えを導くことが求められた。また、飛行物体がほぼ等速直線運動をした理由を答えさせ、物理の専門用語を用いた説明ができるかどうかを見た。全国版乙巻第23問目では、一定の電流範囲内における抵抗の電圧電流特性を探る問題が出題され、実験目的および提供されている実験器具を用いて、実験用電気回路を設計し、適切な器具を選択することが求められた。

 
2022/06/08


澎湃新闻: 专家评高考物理全国卷:不偏不怪,注重考查通用性物理方法


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