【ニュース・中国】「双減」以降初の中国大学入試「高考」、国語問題に現れた改革のサインは?専門家が分析(2)

 
関連する教科書を使用することで、授業の質と効率を高める

 
出題に関わった専門家は次のように話す。出題された問題文は教科書に対応しており、問題文・設問・解答の作成の際は、教科書の重点内容と知識面でつながりを持たせ、教科書との関連性を強化するよう留意した。また、新旧教科書で入れ替わった要素を十分考慮に入れ、新旧教科書のどちらにも収録されている伝統的なオーソドックスな文章を優先的に選択した。顕在的関連性と潜在的関連性の2種類を柔軟に運用し、学校教育において教科書を重視・活用して、授業に力を注ぐことは、授業の質を高め、学生の成績向上を図るよう導く効果もある。

 
顕在的関連性としては、試験問題に教科書と直接関連のある内容を盛り込んだ。全国版乙巻の古代漢詩文読解問題には王勃の『白下駅餞唐少府』が用いられ、教科書に掲載されている王勃の名作『送杜少府之任蜀州』と比較させることで、2首の送別の詩と、離別を題材とした普通の感傷的な描写の作品との違いを実感させた。詩中の「去去如何道?長安在日辺(どうやって行くのか?長安は日の辺にあるのに)」は「海内存知己、天涯若比隣(海中に知己あり、天涯は近隣のようだ)」同様、激情に満ちている。また、新「高考」II巻の古代漢詩文読解には李白の『送別』が用いられ、この詩の最後の2句「雲帆望遠不相見、日暮長江空自流(雲帆は望遠に相見えず、日の暮れ長江は空に自由に流れる)」と、教科書に掲載されている『黄鶴楼送孟浩然之広陵』の「孤帆遠影碧空尽、唯見長江天際流(孤帆の遠影碧空に尽き、唯長江の天際に流れるを見る)」という表現は同じかどうかを問う問題が出された。

 
潜在的関連性とは、題材の選択が教科書の内容と密接に関連するということだ。新「高考」II巻の言語・文字応用問題IIには蕭紅の『呼蘭河伝』が用いられたが、これは小学校の国語の教科書に掲載されている『火焼雲』と出所が同じである。高校の教科書にも蕭紅の作品が掲載されており、学生は蕭紅の文章スタイルに慣れ親しんでいる。また、全国版甲巻の文語文読解および新「高考」I巻文語文読解の問題には『戦国策』からの引用が用いられた。新旧教科書にはいずれも『戦国策』に題材を採った文章が掲載されており、学生はその内容や形式に触れている。さらに、全国版甲巻の作文問題「大観園試才題対額」および新「高考」II巻の情報系の文章読解「『紅楼夢』の翻訳」では、『紅楼夢』に関する知識を直接問う問題はなく、原著を読んだことがなくても答えられるが、教科書の『紅楼夢』抜粋部分の学習や「原著の通読」をしていれば、問題がよりよく理解できるような出題となっている。

 
形式を一新し、学生の「ひたすら問題集を解きまくる」行為を減らす

 
2022年度「高考」国語問題は、『新時代における教育評価改革を深化させるための全体構想』を実行し、「比較的固定化された出題形式を変え、記述式の割合を高め、丸暗記と『ひたすら問題集を解きまくる』行為を減らす」という面で模索を続けた。新しい出題形式を用い、試験問題の開放性と柔軟性を拡大させ、丸暗記と「ひたすら問題集を解きまくる」ことで得点できる可能性を低下させ、効率の低い学習方法は無意味なプレッシャーと負担しか生まないことを学生に認識させるよう作成された。

 
問題文の文体や組合せ方式はさらに多彩になった。4つの試験問題では、現代文読解の文章に政治論文、学術論文、通俗科学文、専門書のまえがき、小説、散文、ノンフィクションなどが使用され、単一の文章もあれば、複合的な文章もあった。複合的な文章には、文字だけの文章もあれば、図やイラスト入りの文章もあった。古代漢詩文読解の問題には唐詩、宋詩、宋詞が出題された。文語文読解の問題文は、戦国・秦・漢時代の雑史、別史、諸子の経典著作からも出題されており、史伝や年代記に限らない出題となった。

 
試験問題の内容はさらに柔軟になった。文語文読解の第11問目では、記憶力重視で文化・常識を問う問題から、理解力重視で文語文の熟語・機能語を問う問題が出題された。文語文の熟語の古今における意味の異なりを問う問題では、「尊重」が出題された。現在では一般的に「敬い重んじる」「重視する」を表すが、問題文中では「高貴な」とか「要人」の意味で用いられており、古今で意味が異なる。また、教科書に出てくる意味用法との比較も出題された。たとえば問題文中の「為趙蔽」の「蔽」と、教科書に掲載されている『鄒忌諷斉王納諌』「王之蔽」の「蔽」の意味を比較させた。

 
試験問題はより自由度が増した。言語・文字応用問題の四字熟語を問う問題では、選択問題から直接答えを記入させる穴埋め問題に変更された。答えは必ずしも1つではなく、上下の文脈に合った答えなら得点が与えられる。出題内容も、意味の近い四字熟語の違いを問う問題から四字熟語の知識量と応用力を問う問題に変化した。新「高考」I巻の文学系の文章の読解問題では、馮至が史実をもとに描いた小説『伍子胥』から、小説化前後における「漁夫拒剣」の文学的効果の違いを考えさせる問題が出題された。問題の狙いは、学生自身の読書経験や審美眼に基づき、自分の力で文章を読み解かせることだ。この問いには正解や模範解答はなく、読解の参考として要点をいくつか示し、答案がこれらの要点のいくつかと重なってさえいれば満点が与えられる。示された要点以外の解答でも、理路整然としていれば得点が与えられる。

 
“中国教育报”微信公众号 2022/06/07


澎湃新闻: “双减”之后首次高考语文试题体现哪些改革信号?专家评析


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