【ニュース・中国】名門校の修士・博士課程学生がこぞって地方小都市に就職 専門家:学歴至上主義を捨て、職務に適した人材配置を

 

最近、名門校の修士・博士課程を修了した学生がこぞって地方の小都市に就職する現象が注目を集めている。高学歴・名門校卒という「後光」を背にした「エリート」が、地方小都市の公共機関や国有企業の採用者名簿に名を連ねている現状は、「学歴過当競争ゆえのやむを得ない選択」なのか、それとも「人材誘致の正常な流れ」なのか。ネットでは論争が巻き起こった。

 
事の発端は、浙江省麗水市遂昌県の「2022年遂昌県世界一流大学優秀卒業生健康診断候補者公告」という公示名簿に掲載された24部署の候補者ほぼ全員が「双一流」高等教育機関出身者だったことだ。24人のうち、博士号取得者は4人、修士号取得者は19人、学部卒業生はわずか1人で、配属先の部署は、専門技能職を除けば、郷鎮や街道(訳注:いずれも中国の末端行政単位)の末端部署だった。しかも24人の応募者はほぼ全員が名門校卒で、修士号・博士号取得者の割合は95.8%にも達していた。

 
この他、江蘇省塩城市阜寧県が公表した「2022年全国高等教育機関および海外名門校優秀卒業生採用予定者名簿(第一弾)」でも、採用予定者140人のうち多数が北京大学、南開大学、東南大学、中国科学院大学、南京大学、浙江大学、上海交通大学、ミラノ工科大学、シドニー大学、香港理工大学など国内外の名門校出身だった。

 
名門校の修士・博士号取得者がなぜ地方小都市での就業を選ぶのだろうか。それには、現地の人材誘致政策が大いに関係していた。

 
「2022年遂昌県世界一流大学優秀卒業生募集公告」では、初めて採用され遂昌で勤務する全日制大学院修士課程修了者および「高考」において第一分数段で合格した(訳注:上位の成績を収め重点大学への入学資格を得た)全日制4年制大学卒業生は、「房票」(住宅券)補助30万元分および生活手当年3万元×5年分の計45万元の政策奨励金が受け取れると規定されている。全日制大学院博士課程修了者はさらに優遇され、房票補助50万元分および生活手当年5万元×5年分の計75万元の政策奨励金が受け取れる。

 
阜寧県も優遇条件を公表している。県に属する一等級の国有企業に就職する優秀卒業生の税引前年俸は、博士号取得者が年30万元以上、修士号取得者が年20万元以上、4年制大学卒業生が年15万元以上で、昇給制度も確約されている。しかも、彼ら優秀な卒業生が5年以内に阜寧県内に住宅を購入した場合、博士号取得者は40万元、修士号取得者は20万元、4年制大学卒業生は15万元の住宅購入資金援助が付与される。

 
これに対し学歴過当競争ゆえの人材の無駄使いだという意見が多い。一方、地方小都市は都市化の鍵を握っており、大量の人的資源を必要としているため、そこに高等教育を受けた人材が集まることは、国のさらなる急成長にとって有益との意見も少なくない。

 
名門校の修士・博士号取得者がこぞって地方小都市に就職する背景には何があるのだろうか。中国教育科学研究院の儲朝暉研究員は本紙の取材に対し、次のように述べた。目下、雇用情勢が厳しい中、各地方が積極的に人材誘致策を打ち出していることは、就職難の緩和に貢献していると言える。しかし、単に職位や給与・福利厚生の面からだけではなく、誘致する人材が現地のニーズに沿っているかどうか、必要な職位で必要な役割を果たすことができるか、人材誘致システムが持続可能性を備えているかを考慮する必要がある。他の地方で模倣したいと考える場合も、単に張り合おうとするのではなく、持続可能性と長期的観点から考慮すべきだ。

 
では、これらの人材誘致コストや、現地にもたらされる実際の利益について、儲氏はどう見ているのか。最も肝心なのは、誘致された人材が有用な人材かどうかであるという。職場で役割を果たしてこそ有用な人材であり、これこそ雇用者や招致した側が守るべき基本原則だ。学歴のみを過度に重視するのは時代遅れである。儲氏は学生に対しても、無闇に高学歴を追求するのではなく、自分の成長に適した、自分が能力を発揮できる仕事を探すよう注意を促す。

 
地方によっては人材誘致に客観的な評価基準がないため、現実問題として、権力を持つ組織や個人が人材誘致の名目で「コネ採用」を行い、結果として就職のハードルが上がり、有力者の子弟のために職位を用意することで高報酬となるシステムが存在していることに注意しなければならないと儲氏は言う。人材誘致の特権の乱用が起こらないよう、現地には適切な監督体制が必要だ。さもなくば、就職市場全体が悪循環に陥ってしまう。

 
今年の高等教育機関卒業生の前にはいくつもの就業の壁が立ちはだかっている。一つには、就業希望者の増加がある。2022年度の高等教育機関卒業生は史上初めて1千万人を突破する見込みだ。さらに、コロナ禍の影響で、就職市場は打撃を受け、企業の雇用も縮小傾向にある。高等教育機関卒業生の就職は党中央、国務院ならびに教育部も注視している。

 
目下の就職難を解決するためには、体系性、持続可能性という観点で対策を考える必要がある。最も重要なのは、やはり企業の活力を刺激し、雇用ニーズを増やし、より広範囲に雇用を生むことだと儲氏は主張する。

 
2022/05/15


澎湃新闻: 名校硕博扎堆就业小县城,专家:不应唯学历论,要跟岗位匹配


地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
人材育成 学生の就職
社会との交流、産学官連携 地域連携、社会貢献