【ニュース・中国】月の「土産」 南京大学が新発見(2)

 

 
月面土壌の研究、どれくらい知っていますか?

 
2020年12月17日、月探査機嫦娥5号が、21世紀で初めて月面土壌を持ち帰った。サンプルの重さは約1,731g。中国では初めて地球外の天体からサンプル採取に成功した。

 
2021年7月12日、月面土壌サンプルの科学研究プロジェクトが始動。2kg近い月面土壌サンプルのうち、17.4764gが13の研究機関に配布され、そのうち1gが南京大学に安置された。

 
月面土壌を配布された13の研究機関のうち、南京大学と中国空間技術研究院のチームは、唯一、月面土壌の改造と触媒利用について研究し、月の既存資源の利用と宇宙でのエネルギー転換を実現した。

 
月面での長期生存は、有人深宇宙探査の長い旅路における最初の到達点だ。月の既存の資源とエネルギーを最大限に利用することで、月面での生命維持と宇宙船を発射するための中継ステーションを建設することが可能になる。これまでの宇宙での生存技術と比べて、月面での人工光合成技術は、月の資源と環境により生成される酸素、燃料、および生存に必要な物質が利用可能で、適用温度範囲も広く、低エネルギー消費かつ高効率なエネルギー転換を実現できる。また、月面での人工光合成技術は主としてヒトの呼気に含まれるCO2と月面で採掘した水資源を用いて酸素と炭化水素を生成する。この目標が実現できれば、宇宙でのヒトの生存の可能性と持続性を大幅に高めるとともに、高い経済効率も備えることができる。

 
月で最も豊富な資源の一つである月面土壌を宇宙での人工光合成触媒として用いることは、月の既存資源の利用において極めて重要なポイントだ。地球に存在する触媒ではなく、月面土壌あるいは月面土壌から採取した成分を月での人工光合成触媒に用いることで、宇宙船の積荷とコストを大幅に削減することができる。嫦娥5号が持ち帰った月面土壌のサンプルは、宇宙での人工光合成を実現するためにまたとない好機をもたらしてくれた。

 
さらに深く知る

 
2021年10月8日、世界トップレベルの科学誌『サイエンス』オンライン版(Science Online)に、研究論文「嫦娥5号の持ち帰った若い玄武岩の年代および成分」が発表された。嫦娥5号が持ち帰った月面土壌サンプルを研究対象として発表された最初の学術成果となる。

 
2021年10月19日、中国科学院の研究により、嫦娥5号月面土壌サンプルは新しく生成された月の海の玄武岩であることが明らかになるとともに、嫦娥5号の着陸地点のマグマの年代やマグマ源域の性質に対する認識が新たにされた。

 
2021年12月、中国科学院紫金山天文台と南京地質古生物研究所が合同で嫦娥5号月面土壌サンプルを研究した結果、嫦娥5号の着陸地点では、過去に何度も火山噴火活動があったことが明らかになる。

 
2022年1月8日、『Science Advances』誌に研究成果を発表。中国科学院地質地球所惑星科学チームが上海技術物理研究所、国家空間科学センターなどのチームと合同で、初めて本来の月表面条件下での水分含有量を測定した。

 
2022年2月15日、世界的科学誌『ネイチャー』に研究結果を発表。中国科学院宇宙情報イノベーション研究院と協力者は、嫦娥5号月面土壌サンプルの同位体年代および着陸地点の衝突クレーターの統計結果を利用し、現在一般的に用いられている月年代関数を基に、新しくより正確な年代関数モデルを構築し、月と惑星科学研究に、より正確な時間軸を提供した。

 
2022/05/11


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地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究