一部の高等教育機関の間で、ややもすれば各種ランキングでの成績を大げさにひけらかす風潮がある中、南京大学が自主的に世界ランキングからの「脱却」を表明したやり方は、大いに目を引く。
先日、南京大学共産党委員会が発表した1通の文書に注目が集まった。そこには、学校運営における発展目標の位置付けを明確にすること、特に「学科の重点プロジェクトを主とする学科評価体系および予算目標設置体系を全面的に整理し、論文数、世界ランキングを参考とする評価基準を見直さなければならない」と書かれていた。また、「南京大学『第14次五か年計画』」および「南京大学『双一流』建設高等教育機関全体建設案」でも、「学校の発展および科目設置において、今後世界ランキングを重要目標とはしない」とされていた。
世界ランキングがもはや「崇拝」の対象でないことは、次のことからも推し量ることができる。2019年の全国両会において、「民間組織の発表する大学ランキングに対する規制」の提案に対し、教育部は、民間組織の発表する大学ランキングには少なからぬ弊害が存在すると回答した。その後の公開討論でも、同様の意見や主張がちらほら聞こえた。
猫も杓子も飛びつく存在だった世界ランキングは、なぜそっぽを向かれつつあるのだろう。一つには、世界ランキングの評価基準にバラつきが大きいことが挙げられる。広く知れ渡っているいくつかのランキングを例にとってみると、QS(クアクアレリ・シモンズ)世界大学ランキングでは、学術分野の同業者評価の割合が40%にも達している。ソフトサイエンス部門では、在籍する教員の研究状況、ノーベル賞やフィールズ賞などを受賞した教員の数などがより重視されている。一方、THE世界大学ランキングの参考指標では、教育活動・研究・論文の被引用数の3項目が最重要視されており、その割合はいずれも30%とされている。また、U.S.News 世界大学ランキングの主要評価指標のうち最重要の項目は評判である。一部の高等教育機関はこうした違いに目をつけ、自校に有利なランキングの「戦績」を取り上げ、学校の長所のみを「余すところなく」押し出してくるのである。
同様に指摘しておかなければならないのは、世界ランキングにはどうしても客観的でない部分が存在するという点だ。上に挙げたランキングは、多くが民間機関によりなされたもので、単純な量的スコアと小規模なサンプル調査による方法で、少数の指標を基に、高等教育機関を総合的にランク付けしている。当然、得られる結論は、客観的とも各機関の実情が反映されているとも言い難い。
さらに重要なのは、世界ランキングに依存することの悪影響がそこここで出始めているという点だ。世界ランキングは非常に影響力が大きい。身近なところでは、学生の出願数、教員の求人、卒業生の就職、さらには資源配分、社会的影響力など各方面に直接影響を及ぼしている。ランキングはある程度、大学の「社会的地位」を決めるといっても過言ではない。そのため、一部の高等教育機関がランキングをめぐってあれこれ工作するのも理解できる。ひどい場合は、大学の本分を忘れ、大学の根源を傷つけてすらいる。特に近年は国際環境がどんどん複雑化し、ランキングが文化的差異やイデオロギーの違いなどに影響されて、教育とは無関係な多くの要素が混入することにより、その信頼性にも影響を及ぼしている。
客観的に見て、もはや高等教育機関にとって、世界ランキングへの熱狂度と信頼性は以前のように復活することはないが、「脱ランキング」を決意するには、多大なる勇気と戦略的な下支えが必要だ。ランキングは脱却しようと思ってすぐできるものではなく、必然的に課題・難題を引き起こす。というのは、「ランキング思考」はすでに深く根付いており、当面は惰性が働くからだ。世界大学ランキングの影響力はすでにある程度大学を「縛り付けて」おり、「脱ランキング」は、短期的には激しい痛みを伴い、事実上の「危機」が訪れる。
だが、現状では「縛られて」いるのだとしても、「脱ランキング」は今後止められない流れだ。であれば、高等教育機関は、ランキングから脱却した後、発展のためにいかにして科学的で効果的な評価基準を確立すべきかという問題が生じてくる。
大学は凝り固まったランキング思考を打破しなければならない。大学は評価されてもよいが、ランク付けされるべきではない。大学が一旦ランキングに加われば、「ランキング至上主義」が生み出されることになる。それは基礎教育段階にも関係し、教育システム全体に大きな負の影響を及ぼす。大学は自らの最も重要な価值である人づくりに立ち返らなければならない。したがって、大学の評価システムも、人づくりの成果を最も主要で最重要の評価指標とするべきである。大学の発展の重点も、他でもない人材育成に置くべきだ。人づくりにおいて価値を実現し、創造することのできる大学こそが良い大学なのだ。
今年、中国の高等教育機関卒業生は1,000万人を超える。大学の人材育成の任務は極めて重大で、そのニーズも切実である。高等教育機関は資源配分の効率化を図り、国や社会が求める人材の育成を最優先事項かつ最重要評価基準とすべきだ。また、大学は特色化も実現しなければならない。高等教育が普及した今日、大学の特色化は必然的に大学の拠り所となるはずだ。それこそが、特色ある人材を育成し、社会からの人材評価の単一化を打破する助けとなり、ひいては基礎教育段階にまで影響を与える唯一の手段である。
もちろん、大学が世界ランキングから脱却するためには、大学自身と同じくらい、教育主管部門の力も必要だ。教育主管部門は、他の部門と連携して、わが国の国情に合った大学評価システムの構築を模索し、社会全体に開かれた教育評価システムを確立することが必要である。
光明日报 2022/04/25
澎湃新闻: 光明日报刊文:南京大学首提“去国际排名”意味着什么?
地域 | アジア・オセアニア |
国 | 中国 |
取組レベル | 大学等研究機関レベルでの取組 |
その他 | その他 |