【ニュース・中国】中国の光ファイバー量子鍵配送距離、833キロの世界記録を達成

 
中国科学技術大学によると、同大学の郭光燦院士率いるチームの韓正甫教授および協力者の王双、銀振強、何徳勇、陳巍らはこのほど、833キロメートルの光ファイバー量子鍵配送を実現した。安全な伝送距離の世界記録を200キロメートル超上回り、1000キロメートルの地上間量子暗号通信の実現に向け重要な一歩を踏み出した。同成果は1月17日、「ネイチャーフォトニクス」オンライン版に掲載された。

 
量子鍵配送とは、情報セキュリティ分野において、量子物理学の基本原理を利用し、第三者による盗聴を検知可能にした暗号鍵の配送技術である。光量子は自然界に存在する量子情報キャリアだが、回路上でのロスが避けられず、安全性を保った量子鍵配送の距離に限界が生じてしまう。これはまた、広域量子暗号通信網の設置と応用が制限される主要因の一つにもなっていた。それゆえ、安全な光量子鍵配送による直接伝送距離をいかに延ばすかが、目下の研究の難点であり焦点でもあった。

 
2018年、イギリスの科学者がツインフィールド量子鍵配信を開発したことにより、これまでの理論上の限界値が打ち破られた。しかし、理論の完全化と実験技術の開拓には極めて高い壁が立ちはだかっていた。郭光燦・韓正甫らの研究チームはまず2019年に位相後選択が不要なツインフィールド系のプロトコルを初めて開発し、なおかつ300キロメートルのファイバーチャネルでその実行可能性を実証してみせた。

 
それから2年あまり。郭光燦・韓正甫らのチームは改良版の四位相偏移変調のツインフィールドのプロトコルを開発するとともに、独立光源の位相同期による周波数安定化技術、広帯域ブロードバンドチャネル位相補償技術、高SNR単一光子検出技術などのコア技術の精度をさらに高め、安全性を保った光ファイバー・ツインフィールド量子鍵配送の伝送距離を833キロメートルに伸ばした。

 
中国内外のその他の研究チームの成果と比較すると、同成果は光ファイバー量子鍵配送距離を500、600キロメートルほどから833キロメートルへと大幅に向上させた上、安全ビットレートを50~1000倍に高めた。これにより、1,000キロメートル級地上間広域量子暗号通信ネットワークの実現に向け重要な一歩を踏み出した。
 
2022/01/20


澎湃新闻: 我国光纤量子密钥分发距离创世界纪录,达833公里


地域 アジア・オセアニア
中国
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