【ニュース・中国】光明日報:公共知識データベースの構築は、文献検索サイト「中国知網」の「メビウスの輪」からどのように抜け出すべきか?(3)

 
取材の過程で、定期刊行物の多くは高等教育機関や研究機関が発行しており、中には2、3人で運営されている編集部もあることが判明した。ある業界関係者は、中国の定期刊行物は全体的傾向として「小・散・弱」の特徴があると指摘する。

 
中国北方のある大学の定期刊行物で副編集長を務める郝明明によると、「知網」は毎年取引のある定期刊行物に対し、著作者への原稿料という名目で約200元を支払っている。しかし、収入と支出を分離計算する制度により、編集部に入ってくるお金は、上級の管理部門、つまり高等教育機関が処理することになっている。「私達はその200元を見たこともないですし、当然ながら、著作者から請求があったこともありません。」
ただ、例外はある。中国中部の某高等教育機関が発行する定期刊行物の責任者によると、「知網」は以前、同校の刊行物を、公益宣伝を除き「知網」だけに掲載する独占包括契約を結ぶよう求めてきたことがあったが、学校側がこれを拒否した。「わが校の定期刊行物はいずれも評判が良く、学術界で大きな影響力を持っています。そんな雑誌を『知網』にコントロールされたくなかったのです。」

 
ただ、その質の高さから、同校の定期刊行物は最終的に「知網」に収録されることになったという。しかしこの責任者は言う。「刊行物はその質により、『知網』における地位が決まります。良質の雑誌に対しては、『知網』もいろいろな面で目をつぶってくれますが、そうでなければ、好待遇は望めません。」

 
プラットフォームにとって最大のコストはネットワーク上の著作権使用料であるが、「選択的支払い」を強調

 
2021年12月、「知網」は修士および博士の学位論文ダウンロード価格を大幅に引き下げた。修士論文は1本15元から7.5元に、博士論文は1本25元から9.5元になり、値下げ幅は50%超となった。
「これは問題の根本的解決にはなっていません」と張洪波は言う。「修士および博士論文を含む大量の学術論文に対し、『知網』は『選択的支払い』制度を採っています。『知網』への支払いばかりを強調していますが、著作権者に対する使用許諾申請や著作権料の支払いは、軽視あるいは意図的に無視されています。

 
「『知網』にとって最大のコストは、ネットワーク上の著作権使用料です。ただ現時点では、『知網』のいわゆる『著作権』は、多くが無断使用、あいまいな使用、無効な使用許諾であり、ごく一部のみ有効な使用許諾を得ている状態です。」叢立先は現状を鑑み、「知網」などのプラットフォームは合理的な対価および著作権収入を、定期刊行物などの「仲介者」ではなく、著作権者に還元すべきであり、第三者による会計監査を導入し、「知網」などのプラットフォームの収益や著作権料などを計算し、歩合に応じて支払うメカニズムを確立すべきだと提案する。

 
「数え切れないほど存在する論文や著作権者にとって、1元やそこらの著作権料を手にしたところで実質的意義はあまりありません」と馬徳建は率直に言う。中国の定期刊行物は影響力が小さく、「知網」に対抗するだけの力はない。「外国では強い影響力を持ち、それ自身が知識のプラットフォームになっている定期刊行物が数多く存在します。」

 
一連の知識伝達の過程において、著作者、定期刊行物、プラットフォームは一体どういう関係にあるのだろうか。

 
「一概には言えません」と言うのは郝明明。知識伝達の観点から言えば、いずれも知識の生産者であり伝達主体である。著作者は第一生産者、刊行物の編集部は加工者であり、同時に生産の一部を担ってもいる。「知網」などのプラットフォームも、作品をそのままネット上に上げているわけではなく、デジタル化を行うことで、技術や人手を投入している。

 
著作者や定期刊行物と違うのは、プラットフォームには発言権があるという点である。しかし実際には、プラットフォームに対し法律で厳しい制限が設けられている。

 
「著作権法では、プラットフォームが作品を編集して作成したデータベースは、アンソロジーとみなされています。プラットフォームは自身で編集し作成したデータベースに対してのみ、アンソロジーの著作権を有します」と武漢大学法学院教授の鄧社民は指摘する。「この著作権は定期刊行物の著作権とほぼ同じで、選択・編集・編集のフォーマットやスタイルに対してのみ著作権を有し、データベース中の個別の作品に対しては著作権を有しません。言い換えれば、著作者の権利問題は必ず解決されなければならないということです。」

 
「データベースを収益ツールとみなし、知識の伝達や共有を制限するようなことは避けなければなりません。」そこで鄧社民は、著作権集団管理団体の権限を強化し、著作者の利益と作品発表の場を守れるようにすること、データベース条例を制定し、データベースプラットフォームの運営を規範化すること、著作権関連の行政機関の法執行能力を強化し、データベースプラットフォームを取り締まることの3点を提案する。

 
「著作者、定期刊行物、プラットフォームはいずれも知識生産共同体の一部です。」郝明明は「無料取得、全面的開放」の知識取得モデルを支持する。「つまり、国が今より多くの予算を投入する必要があるということです。」三者は、知識のよりスムーズな伝達を守るため、話し合いに基づき権益の一部を譲渡することも可能である。例えば、著作者は定期刊行物に著作権使用許諾を行い、同種の定期刊行物は協力して権益を主張し、プラットフォームは合理的な費用徴収を行う。「企業が参与してもいいと思います。ただし、公益性を守るため、一貫して政府主導で行うべきです。」

 
2013年にオンラインで開放された、中国社会科学院調査・データ情報センターの国家哲学社会科学学術定期刊行物データベースは、完全無料で利用できる。叢立先は言う。「データベースを誰が、どのように構築し、どう運営していくかについては、グランドデザインが必要です。それより重要なのは、構築された国家学術資源データベースが魅力と影響力を持つことができるかということです。これについては、さらなる考察が必要でしょう。」

 
技術開発がどんどん進む現代、知識の値段もそれに応じて高くなるようなことがあってはならない。取材を重ねる中で、多くの人が訴えていたことは、「知網」はコンテンツ伝達の主体であり、その学術交流に対する貢献は否定できないが、行き過ぎた商業化は知識の共有を妨げてしまうということだった。

 
2022/01/20


澎湃新闻: 光明日报:公共知识数据库建设要如何跳出“知网怪圈”?


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