【ニュース・中国】光明日報:公共知識データベースの構築は、文献検索サイト「中国知網」の「メビウスの輪」からどのように抜け出すべきか?(2)

 
ネット上の転載に明確な境界を引き、「先に許諾を得てから使用する」を再確認することが必要

 
知的財産権の保護が確約されていればこそ、知識は社会を秩序正しくめぐる。著作者が著作権を主張する道筋が明確だった紙媒体の時代とは異なり、ネット時代における著作者の権益保護には、「作品が読まれる」ことも含まれていなければならない。

 
華東政法大学知的財産権学院院長の叢立先は、「訴訟の焦点となる『ネット上の転載』に対する人々の認識は、徐々に明確になってきています」と述べた。叢院長が2006年に提出した博士論文は「ネット著作権問題に関する研究」というタイトルで、ネット作品の定義や、デジタル空間内でやり取りされるコンテンツおよび派生する権利の所有者について検証したものである。

 
最高人民法院は2000年当時、既に新聞・雑誌に掲載され、またはインターネット上に掲載されている作品について、関係者が特に声明を発している場合を除き、ネット上で転載または一部抜粋しても、関連規定に従って報酬を支払い、出所を明記した場合は、権利侵害を構成しないという司法解釈を示している。これは即ち、ネット上の転載を法的に認め、著作権者の同意を得る必要はないと判断したことに他ならない。

 
「これはネット黎明期に、ネットコンテンツの隆盛を促進するという観点から出した判断です。しかし2006年になり、国は『情報ネットワーク伝達権保護条例』を打ち出し、ネット上の転載は例外として認められなくなりました。つまり、ネット上の転載は、著作権者の許諾を受けていない場合はすべて権利侵害に当たるとされたわけです」と叢立先は説明する。

 
「先に許諾を得てから使用」という手順は、最新版の著作権法でも再確認されている。第3版「中華人民共和国著作権法」は2021年6月1日から施行されているが、その第53条では権利侵害を構成する行為について、「本法に別途定める場合を除き、著作権者の許諾を得ずに複製、発行、上演、放映、放送、編集、または情報ネットワークを通じ公衆へ作品を伝達する行為を含む」と明示されている。

 
同様の著作権侵害事件においても、著作者の権益は法的に守られているが、自らこれを主張する人はほとんどいない。某教育系有名雑誌に論文を発表したばかりのある青年研究者は、「私は高等教育機関の教員ですが、著作権侵害云々はあまり気にしていません。それより自分の論文がネット上で広く読まれてほしいと思っています」と言う。

 
「今は紙媒体の定期刊行物の購読者はどんどん減っており、論文掲載料を頼りになんとか生き長らえている雑誌もあるほどです。学術知識の伝達は、ほぼあるいは完全にデジタルプラットフォーム頼みになっています。『知網』は学術研究やその伝達に極めて大きな利便性をもたらしたことは否定できませんが、その反面、定期刊行物の伝達力や影響力といった『首根っこ』を押さえていることも事実です」と張洪波は言う。「研究者や定期刊行物は『知網』に愛憎相半ばというのが正直なところです。」

 
定期刊行物の「一方的投稿規定」は無効、アンソロジーでも著作権を有し収益も得られる。

 
論文を発表するのは別に珍しいことではない。しかし、なぜ今回の「知網」事件はこれほど大きな反響を呼んだのか。その理由を知るには、定期刊行物と著作者の「紙一枚の契約」から説明する必要があるだろう。

 
張洪波は自身の研究室の本棚から適当に雑誌を3冊抜き出し、記者に手渡した。奥付にはいずれも似たような「説明」が記されていた。内容は概ね「著作者が本誌に投稿した時点で、著作物に関する諸権利は、本誌に属するものとする。本誌は当該著作物に対し、インターネット上で発表するなどの権限を有する」といったものである。

 
「定期刊行物の著作権は、定期刊行物をアンソロジーと捉え、法により完全な著作権を有し、情報ネットワーク伝達権などの諸権利を行使することができ、収益を得ることも可能であることで成り立っています。しかし、権利を行使するための前提条件として、原著者一人ひとりから使用許諾を取っておく必要があります。雑誌側が一方的に掲載している著作権表示や投稿規定は、単なる出版側の希望や提案でしかなく、有効な契約とは見なされません」と張洪波は言う。

 
某「双一流」大学が発行する定期刊行物のベテラン編集長・馬徳建は、「『知網』のやり方は、著作者と対面せず、「紙一枚の契約」だけで著作権と伝達権の帰属問題を解決し、著作者と直接関係が生じることを回避し、責任を定期刊行物に押し付けようとするものだと言えます」とぶちまける。馬徳建は関連訴訟を細かく分析する過程で、あることに気づいた。「『知網』は、定期刊行物側が『知網』に代わり、著作者とネットワーク伝達契約を結ぶことを約束していると喧伝していますが、訴訟対象となった定期刊行物は著作者と結んだ有効な契約を一つも提示することができませんでした。」

 
「雑誌に投稿する際、著作者は作品を発表してもらいたいがために、雑誌の著作権表示に何も言わないとか、それを慣例的に同意と見なされても、やむを得ないと耐えている面もあります」と張洪波は指摘する。著作者が定期刊行物に対し「沈黙を守る」のは、定期刊行物がプラットフォームから「脅迫」を受けるのとほぼ同じであることが分かる。いずれも、ネットワーク伝達権を得るためにやむを得ないと判断して行っていることである。

 
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