【ニュース・中国】光明日報:公共知識データベースの構築は、文献検索サイト「中国知網」の「メビウスの輪」からどのように抜け出すべきか?(1)

 
世論に袋叩きにされた文献検索サイト「中国知網」(以下、「知網」)が、謝罪、賠償、一部値下げという譲歩に出た。そして先日、例の事件が再び波紋を呼んでいる。「知網」が某研究者との裁判に敗訴し、再審請求を行ったが、棄却されたというのである。

 
「長江日報」によると、中南財経政法大学を定年退職した元教授の蘇少之は、恩師の趙徳馨教授が「知網」との知的財産権訴訟に勝訴したことを知り、自身の論文が断りなく同サイトに収録されたことについて「知網」を提訴した。この訴訟は2020年12月に北京互聯網法院で一審判決が下され、被告の「知網」は原告に対し、経済的損失2,800元、合理的支出334元、計3,134元を賠償するよう命じられた。「知網」側は、一審判決で認定された要件事実は根拠に乏しく、適用する法律も不適切で、自らは「善管注意義務を果たしており、主観的に過失はなく、損害賠償責任を負う必要性はない」とし、北京知識産権法院に再審請求した。しかし、このほど請求は却下された。

 
「知網」は研究者および学術刊行物の学術成果を広めることで拡大してきた企業で、そのビジネスモデルはしばしば批判を浴びてきた。しかし、ユーザー数が増加するにつれ、研究者や学術誌も「知網」なしではいられなくなるという「メビウスの輪」ができあがってしまった。

 
一連の知識伝達の過程においては、著作権の使用許諾と使用、ネットでの拡散と出版といった問題が交錯している。著作者、定期刊行物、データベースプラットフォームの三者は一体どういう関係なのか。権利、責任、利益はどう区分すべきか。「『知網』のメビウスの輪」から抜け出すにはどうすべきか。これらについて、本紙が取材を行った。

 
「裁判は費用も時間もかかりすぎる上、証拠収集が難しい」

 
「『知網』が著作者に訴えられて負けた後、再審請求を行った理由は、一審・二審の抗弁内容とほぼ同じだが、いずれも抗弁理由不成立と見なされ、請求は棄却された。『知網』は著作権法など一連の法令を無視し、数多くの著作者の著作権を侵害した。」中国文字著作協会(以下、「文著協」)事務局長の張洪波は、「知網」との攻防をこう語った。

 
文著協は2017年、文字作品のインターネットにおける著作権保護をめぐり、初めて訴えを起こし、「知網」が同協会会員・汪曾祺の作品『受戒』を、使用許諾を得ないまま電子化複製して、利用者に有料でダウンロードさせ、違法に利益を獲得し、著作権者の情報ネットワーク伝達権を侵害したと主張した。『受戒』の著作権は、汪曾祺の死後、3人の子が相続しており、文著協が委託を受け、管理および権利保護を行っている。

 
文著協は中国作家協会、中国文学芸術界連合会、中華全国新聞工作者協会などの組織および著作権者らが共同で設立した、中国で唯一、文字作品著作権の集団管理を行う団体である。

 
「裁判文書網」を検索してみると、現在までに個人で「知網」を提訴し、裁判に勝った例は数えるほどしかない。

 
文著協は「知網」の著作権侵害の数の膨大さと範囲の広さを証明するため、初期に知的財産権が侵害された有名会員作家110名の2万点以上に上る作品リストを作成した。しかし、その後しばらくして、「知網」は当該2万点以上の作品を削除してしまった。

 
趙徳馨教授は「知網」を提訴し、8年の長きに亘る戦いの末、ようやく「知網」側から正式な謝罪を得た。「知網」側は、法曹界の専門家、研究者、出版社などの意見やアドバイスに謙虚に耳を傾け、関連する法令および政策の要件に厳格に従うと述べた。

 
「著作権者にとって、裁判は費用も時間もかかりすぎる上、証拠収集が難しいです。一般の著作権者なら恐らくすぐ裁判に持ち込むことはしないでしょうが、個人で訴えたからといって、これまで明らかになった「知網」の問題点が改善されるとは思えません」と張洪波は言う。「ですが、それでも解決に向けて努力していかなければならないのです。」

 
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